あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「ええ、昨夜火事が起きて……食料とか、野営用の毛布とかが焼けてしまったんです。薬は別の倉庫だったから大丈夫だけれど……台帳も焼けてしまって」
「うん、そうなんだ。倉庫の出入りとか納品数とか全部なくなってしまって、何がどれだけあったのか、これからどれだけ買えばいいのかわからなくなっちゃったんだよ」

 エルニーナもセヴェロも、昨夜あれから眠れていない。顔色の悪い二人に気づいた様子で、ゲオルグは微笑んだ。

「それは、大変でございましたな。噂は聞きましたので、いつもより多めにお持ちしています」

 愛想のよい微笑みを崩さないゲオルグは、自信にあふれているようだった。実際、やり手なのだろう。
 火事が起きたのは昨夜の夜遅く。それにも関わらず、いつも以上に大量の品を持ってきた。辺境伯家では買わざるを得ないとわかっていた。
 こんな表情、王宮で働いていた頃、何度も見た覚えがある。

(この人、自分が捕まるとは思っていないのね)

 自分だけは、何があって生き残れると思っている目。ステファノもよく同じような目をしていた。こういう目をする者は、しっかりとした後ろ盾があることが多い。

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