綾瞳
「……ごめん、なさい……」
「なんで謝るの」
「だ、だって……」
「まあいいよ、風呂沸かしてくるから」
 そう言って食器洗いを切り上げ、風呂を沸かしにバスルームに向かった。
 ――風呂に沸かしに行く背中を見送りながら、雅くんを不機嫌にしてしまったのかな、わたし、との不安が胸を掠める。彼のご機嫌をこうしてうかがっては謝ってばかりで。
 ほんとう、なにがしたいのか。
 なにがしたいのかさえ正直、よくわかっていない。
 オムライス、どうしよう。
 残すかを聞かれたときに『いいよ』と言われたから、このままにしておこう。それに、へんに動いたら逃げようとしたと判断されて、行動を制限されてしまう。
 ――お風呂を沸かします。
 自動音声が聞こえて、雅くんが帰ってくる、と身構える。
 動いたら、だめだ。
 椅子に座りながら硬直する。
 部屋は暖房が効いていてあたたかい。なのに、今日のわたしたちは変にぎくしゃくと寒いまま。
 この対比が残酷さをより一層浮き彫りにする。
 ガチャリ。
 ドアが開いた。
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