綾瞳
 スプーンをプレートの上に置く。
 お風呂、いつ沸かすのだろうか。
 他人行儀な背中を見つめつつ、ぼんやりとこうおもう。
 オムライスはもう食べられそうにない。
「あ、あのっ……ご、ごめんね……」
「――残す?」
「う、うん」
「いいよ。もうちょっとしたら沸かすから、風呂」
「う、うん」
 ジャーッと水の迸る音が部屋に反響し、この音がわたしたちの調和を容赦なくかきみだす。
 意図して水栓レバーを上げたのなら、確信犯だ。
 ジャーッジャーッと水の迸る音と、カチャカチャ、カチャカチャと金属のふれあう音が混ざり合う。
 酷く耳障りだな、とおもう一方で、耳障りだとも言い出せなくて。
「――うるさかった?」
 ドキン、と心臓がさわぐ。
“すべてを見抜かれた”
 そうした感覚に襲われて。なんで、とおそるおそる雅くんを見れば、眼鏡の奥の鋭い視線がわたしを“捕らえて”いた。
「……」
「言いなよ、正直に」
「……うん」
「ごめんね」
 こくん、とうなずけば、「不快に感じられるノイズだったね、確かに」とたった一言、そう結論づけた。
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