綾瞳
はっとする。
“雅くんの作るオムライスが一番”
――ふとこうおもったときに、ママが作るオムライスを食べたことがあったっけ、と。
そもそも、ママはわたしのためにそれを作ってくれたことが一度でもあったっけ、と。
ママ、元気にしているのかな。
われに返り、ついぼうっとしてしまう。
「……綾瞳?」
「あっ……ごめんね……」
笑顔を取り繕い、あははとかるくわらう。雅くんには、雅くんに“だけ”は心配をかけないと決めていたのに。いま、心配をかけてしまったのがすこし、こころ苦しい。
「いや、別になにもないなら構わないんだけど」
「うん……」
うん、と返したトーンはこころなしか沈んでいた。
オムライスを食べ進める。
スプーンを持つ手をやすめ、ちらり、と雅くんを見る。彼の視線はテレビのニュース番組のほうに向いていて。それは上野公園の桜の開花予測を報じている。
わたしの桜は、いったいいつになれば咲くのだろうか。
わたしのなかの桜はずっとつぼみのままで。その上に雪がしんしんと、しずかに降り積ってゆく。
そのつぼみが芽吹くことは、ない。
わたしの季節は、いまだに冬のまま。
寒い、寒い。
あたためてほしい。
“雅くんの作るオムライスが一番”
――ふとこうおもったときに、ママが作るオムライスを食べたことがあったっけ、と。
そもそも、ママはわたしのためにそれを作ってくれたことが一度でもあったっけ、と。
ママ、元気にしているのかな。
われに返り、ついぼうっとしてしまう。
「……綾瞳?」
「あっ……ごめんね……」
笑顔を取り繕い、あははとかるくわらう。雅くんには、雅くんに“だけ”は心配をかけないと決めていたのに。いま、心配をかけてしまったのがすこし、こころ苦しい。
「いや、別になにもないなら構わないんだけど」
「うん……」
うん、と返したトーンはこころなしか沈んでいた。
オムライスを食べ進める。
スプーンを持つ手をやすめ、ちらり、と雅くんを見る。彼の視線はテレビのニュース番組のほうに向いていて。それは上野公園の桜の開花予測を報じている。
わたしの桜は、いったいいつになれば咲くのだろうか。
わたしのなかの桜はずっとつぼみのままで。その上に雪がしんしんと、しずかに降り積ってゆく。
そのつぼみが芽吹くことは、ない。
わたしの季節は、いまだに冬のまま。
寒い、寒い。
あたためてほしい。