綾瞳
 オムライス、食べよう。
 スプーンをオムライスに突っ込み、残り半分になったオムライスを黙って食べ進める。さっきまでの空気はどこか遠くへ消えて、雅くんがテレビに向ける視線と、キャスターのあまくない紫煙だけが部屋をしずかに、たたしずかに支配していた。
 ――プツン。
 テレビの電源が落とされた。
「……上野公園の開花予測以外、今日のニュースはいまいちだな」
 ぽつり、そうもらした。
 現実が、戻ってきてしまった。
 雅くんがまた、わたしを見てくれるんじゃないかって。彼がテレビの視聴を切り上げるたびに、こうしたあまい予感にうかれてしまうわたしがいる。
 わたしは、ほんとうにばかなのかもしれない。
 眼鏡の奥に宿る感情――その答えを知りたくて、雅くんのかんばせを見つめる。
 が、視線から逃れるみたいわたしから顔を背け、煙草の火を消した。
 その後、椅子から立ち上がり、雅くんは食器類を手にしてキッチンへと移動した。
 いつもならなにか、一言くれるのに。
 今日の雅くんは、やけによそよそしい。
 他人行儀な空気を、キャッチしてしまった。
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