【長編版】冷徹弁護士の甘い執着〜八年前の初恋相手に、もう一度捕らわれる〜
それから二年以上の月日が流れていた。
二人が暮らすマンションのリビングには、ケーキとシャンパンが並んでいた。
「すごい……用意してくださったんですか?」
「今日はお祝いだからな。司法試験合格おめでとう。まさか三年も経たずに予備試験と司法試験をクリアするとはな。さすがだ」
「ありがとうございます」
麻里は照れたように微笑んだ。
***
正樹と正式に結婚した後も、麻里は変わらず介護士として働いていた。
(結婚したからって、元々一緒に暮らしていたのだから大きな変化はないわね。仕事も変わらないし)
しかし、ただひとつだけ大きく変わったことがある。
それは、諦めたはずの「弁護士になる」という夢にもう一度挑もうと決意したことだ。
(介護の仕事も大好きだけれど、あの時の無力感はもう味わいたくない)
山崎の苦悩を目の当たりにしていた麻里は、自分の中にくすぶっていた気持ちの正体に気がついた。
『私、やっぱり弁護士資格を取りたいです。高齢の方々を守るには、介護士資格だけは足りないって分かったので』
そうして麻里は昼は介護の仕事、夜は司法試験に向けた勉強という日々を二年以上続けてきた。
今日、合格通知書が麻里のもとに届くまでは――。
(この合格通知書は、私の未来の切符ね)
退学許可通知書を握りしめて正樹に別れを告げた日から、随分と遠くに来た。
ようやくあの頃の苦しさが消えていくような気がした。
***
「それにしても、よくめげなかったな。仕事と両立するのは大変だっただろう」
「正樹さんがずっと付きっきりで教えてくれたからです。一人だったら挫折していたかもしれません」
そこまで言って麻里はふっと微笑んだ。
「どうした?」
「いえ、勉強を教えてもらっていた時、なんだか楽しかったんです。大学時代によく二人で図書室で勉強していた時のことを思い出して、あの時の続きをしているみたいで……。大変でしたけど、幸せでした」
麻里が懐かしむように目を細めると、正樹の瞳がわずかに揺らいだ。
「そうか……実は俺も同じことを思っていた。本当に……麻里は俺の誇りだ」
彼のまっすぐな瞳が麻里を射貫く。
彼の言葉が麻里の胸にストンと落ち、じわりと涙が溢れた。
「正樹さんがいてくれたからです。本当にありがとうございますっ!」
麻里は泣き笑い、そして二人で乾杯をした。
ケーキを食べ終えソファーで過ごしていると、横に座っていた正樹が麻里の手をするりと握った。
「この後が大変だな。司法修習もあるし、試験もある」
「そうですね。司法修習中は兼業が出来ませんから、一旦退職しないといけないですし……。でもここまで来たので頑張ります」
「あぁ、麻里なら乗り越えられる」
正樹は麻里の手に口づけをすると微笑んだ。
「ふふっ、いつか正樹さんを越える弁護士になってみせます」
「言うじゃないか。こちらも負ける気はない」
二人は見つめ合い、同時に噴き出した。
「この先どうなろうと、愛してる。それは変わらない」
「私も正樹さんのこと、ずっと愛し続けますから」
そして笑いながら唇を重ねると、そのまま抱き締め合うのだった。
【完】
二人が暮らすマンションのリビングには、ケーキとシャンパンが並んでいた。
「すごい……用意してくださったんですか?」
「今日はお祝いだからな。司法試験合格おめでとう。まさか三年も経たずに予備試験と司法試験をクリアするとはな。さすがだ」
「ありがとうございます」
麻里は照れたように微笑んだ。
***
正樹と正式に結婚した後も、麻里は変わらず介護士として働いていた。
(結婚したからって、元々一緒に暮らしていたのだから大きな変化はないわね。仕事も変わらないし)
しかし、ただひとつだけ大きく変わったことがある。
それは、諦めたはずの「弁護士になる」という夢にもう一度挑もうと決意したことだ。
(介護の仕事も大好きだけれど、あの時の無力感はもう味わいたくない)
山崎の苦悩を目の当たりにしていた麻里は、自分の中にくすぶっていた気持ちの正体に気がついた。
『私、やっぱり弁護士資格を取りたいです。高齢の方々を守るには、介護士資格だけは足りないって分かったので』
そうして麻里は昼は介護の仕事、夜は司法試験に向けた勉強という日々を二年以上続けてきた。
今日、合格通知書が麻里のもとに届くまでは――。
(この合格通知書は、私の未来の切符ね)
退学許可通知書を握りしめて正樹に別れを告げた日から、随分と遠くに来た。
ようやくあの頃の苦しさが消えていくような気がした。
***
「それにしても、よくめげなかったな。仕事と両立するのは大変だっただろう」
「正樹さんがずっと付きっきりで教えてくれたからです。一人だったら挫折していたかもしれません」
そこまで言って麻里はふっと微笑んだ。
「どうした?」
「いえ、勉強を教えてもらっていた時、なんだか楽しかったんです。大学時代によく二人で図書室で勉強していた時のことを思い出して、あの時の続きをしているみたいで……。大変でしたけど、幸せでした」
麻里が懐かしむように目を細めると、正樹の瞳がわずかに揺らいだ。
「そうか……実は俺も同じことを思っていた。本当に……麻里は俺の誇りだ」
彼のまっすぐな瞳が麻里を射貫く。
彼の言葉が麻里の胸にストンと落ち、じわりと涙が溢れた。
「正樹さんがいてくれたからです。本当にありがとうございますっ!」
麻里は泣き笑い、そして二人で乾杯をした。
ケーキを食べ終えソファーで過ごしていると、横に座っていた正樹が麻里の手をするりと握った。
「この後が大変だな。司法修習もあるし、試験もある」
「そうですね。司法修習中は兼業が出来ませんから、一旦退職しないといけないですし……。でもここまで来たので頑張ります」
「あぁ、麻里なら乗り越えられる」
正樹は麻里の手に口づけをすると微笑んだ。
「ふふっ、いつか正樹さんを越える弁護士になってみせます」
「言うじゃないか。こちらも負ける気はない」
二人は見つめ合い、同時に噴き出した。
「この先どうなろうと、愛してる。それは変わらない」
「私も正樹さんのこと、ずっと愛し続けますから」
そして笑いながら唇を重ねると、そのまま抱き締め合うのだった。
【完】


