ライオンのサーカス

6



 ここはお城の庭園。

 赤い橋の下の池は、今日も静かに波打っていて、よくよく見ると、サヤのペットの水龍の影。

 橋の上では、今日はサヤが1人で水龍に肉を遣っていた。

 ふだんなら係の者にさせている水龍の食事の世話を、今日だけは気まぐれに引き受けていたのである。


 
 ────ああ、暇だわ。



 サヤは池に目を落とした。


 お姫様という立場であるサヤは、いつも下の者に守られていて、いくら暇で仕方なくても1人では散歩すらさせて貰えない。
 させて貰えないことになってはいるが。


 サヤがどこへ出掛けようかと考えていると城の庭園の方からアキトが歩いて来た。

 
「サヤ!。何をしているのです?」



 アキトはサヤの背中に声を掛けた。

 
「お兄様。スイに餌をやっていた所ですのよ。」

 
 それを聞いて、アキトはうっと顔を引きつらせた。
 実はこの妹に、いつも水龍の餌食にすると脅されている。


「け、結構な事ですね。スイは元気でしょうか。」

「元気ですわ。おかげさま。」


 サヤは軽くそう応えてから、また口を開いた。

 
(わたくし)、暇で暇で。兄様、私、今からモネの所にでも行って来ようと思ってるんですの。」

「いけません、サヤ。無意味な外出は禁止されているはずです。(わたくし)達王族は気をつけなくては。」

「あんまり暇すぎますの。兄様、母様や父様に、うまく言って置いて貰えませんこと?」


 サヤはそう言ってから、魔法の杖を取り出し、笑みを浮かべた。


「しかし……」

「スイ!」


 サヤがペットを呼ぶと、水龍は水中から首を擡げた。
 銀色に光る大きな体でサヤの後ろに並んだ所は、まさに鬼に金棒。

 
「今、スイ、お腹を減らしてますの。兄様1人くらいなら頂けてよ?」


 飛び上がったアキトにサヤはにこにこしながら唇に指を当て、


「この事は内密に。」


 ……。



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