約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「うん! やる!」

 湊の言葉に詩音は迷いなく頷くと、その返事に小さく笑みを浮かべた湊は財布から一万円札を取り出して両替機で二千円分を百円玉へと替える。

 そして再び詩音がやりたがっていたクレーンゲームの前へ戻ると、詩音の身体を軽々と抱き上げて操作盤の前に立たせた。

「まずはお金をここに入れてごらん」

 詩音はこくりと頷き、言われた通りに百円玉を投入する。

「次は、この光ってる『1』のボタンを押すんだよ。押している間はクレーンが動くから、ぬいぐるみに狙いを合わせたら手を離すんだ」
「うん」

 湊は詩音の小さな手に自身の手を添えると、ゆっくり操作の仕方を教えていく。

「そう。その次は『2』のボタンを押してみようか」

 詩音が一人でボタンを押すと、クレーンはゆっくりと降下していき狙っていたぬいぐるみを掴んだ。

「とれた……!」

 期待に満ちた声が漏れるも、ぬいぐるみは途中でぽとりと落ちてそのまま元の位置へ戻ってしまった。

「あぁ……」

 詩音は肩を落として分かりやすく眉尻を下げる。

 泣き出してしまうかもしれない――そう思った和葉が慌てて声を掛けようとした、その時だった。

「惜しかったね」

 湊は優しく詩音の頭を撫でる。

「こういうのは一回で取れるほうが珍しいんだ。何回か挑戦して取るものだからね。もう一回やってみようか」
「うん、わかった!」

 たったそれだけで詩音の表情は明るさを取り戻し、再びやる気いっぱいに百円玉を投入していく。

 その様子を見ていた和葉は申し訳なさそうに湊へ視線を向けた。

「湊さん、あの……ごめんね。詩音が……」
「構わないさ」
「あの、お金……」
「気にしなくていい。俺が好きでやらせてるだけだから。和葉が気を遣う必要はないよ」
「でも……」

 なおも遠慮する和葉に湊は穏やかに笑うだけ。

 その横で詩音は教わった通り何度も挑戦を続けていく。

 そして、千円分を使い切ろうかという頃、

「あっ!」

 クレーンがぬいぐるみをしっかりと掴み、そのまま景品口まで運んでいき、次の瞬間、景品は取り出し口へと落ちた。

「やったぁー!!」

 それを見た詩音は飛び跳ねながら歓声を上げる。

「すごいな、詩音ちゃん」

 湊が笑って褒める横で、和葉も嬉しそうに微笑んだ。

「すごいね、詩音」

 嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめる娘を見つめる二人の表情は自然と柔らかくなり、その光景はまるで本当の家族のような温かな幸せに包まれていた。

「おにーちゃん、ありがとう!」
「どういたしまして。他にも見てみようか?」
「うん!」

 ぬいぐるみを片手に抱き締める詩音は空いたもう片方の手で湊の手をしっかり握る。

 傍から見れば父と子のように見えるであろう二人。

 そんな二人の姿に和葉の胸はチクリと痛む。

「和葉?」
「ママ?」

 その場に立ち尽くしたままの和葉を心配した二人が声を掛けると和葉はハッと我に返り、

「あ、ごめんなさい。今行く」

 慌てて二人の後を追いかけた。
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