約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「詩音ちゃん……」

 どう言葉を掛ければいいのか分からない湊は言葉を探し、一方の和葉も詩音をどう納得させればいいのか考えていた。

 そんな二人の沈黙を破るように詩音は潤んだ瞳で湊を見上げる。

「おにーちゃんも、いっしょがいいよぉ……」

 その悲痛な声に湊の胸は更に締め付けられるけれど、何とか納得してもらうしか無かった。

「ごめんね、詩音ちゃん。俺は家族じゃないから、ずっと一緒に居ることは出来ないんだ」

 その言葉に詩音の表情は更に曇っていくも、湊は優しく微笑んで話を続けていく。

「だけど、ママと詩音ちゃんとは友達だから、また会うことは出来る……そうだよな、和葉」

 少し強引な言い方かもしれないと湊は不安に思ったけれど、それでも今の詩音を納得させるには一番良い言葉だろうと考え和葉に同意を求めた。

 湊の問いに和葉が、「うん……そうだね」と返したことで湊はホッと安堵の息を吐く。

「……おともだち? おにーちゃんは、ママとしおんのおともだちなの?」
「そうだよ。だからまた会う約束が出来るんだ」

 湊が優しく答えると和葉も詩音の頭を撫でながら続けた。

「だからね、詩音。今日はお兄ちゃんは帰っちゃうけど詩音が元気になったらまた来てもらおう? ね?」

 二人に優しく諭された詩音はようやく、「わかった」と頷いたけれど、その表情にはまだ不安が残っているのか浮かない顔をしたまま。

 恐らく以前も、「また会おう」と約束したのに、なかなか会えなかったことを覚えているのだろう。

 そんな詩音の気持ちを察した湊は少し考えてから口を開いた。

「それじゃあ再来週、三人でどこかへ出掛けようか。詩音ちゃんの好きなところでいいよ」

 そう提案すると和葉へ視線を向ける。

「……駄目かな?」

 詩音も期待に満ちた瞳で和葉を見上げた。

「ママ、いい?」

 その問いに和葉は穏やかに微笑んだ。

「湊さんが大丈夫なら……お願いします」

 その言葉を聞いた詩音がようやく安心したように笑みを見せたので、湊も和葉もホッとした様子を浮かべていた。

「それじゃあ、詳しいことはまたあとでメッセージを送るから」

 玄関で靴を履いた湊がそう言うと和葉は小さく頷いた。

「ええ、分かったわ」

 そして湊は和葉の隣に立つ詩音へ視線を向けた。

「詩音ちゃん。ママの言うことをちゃんと聞いて沢山食べて沢山寝て、風邪を早く治してね」
「うん! おにーちゃん、またね!」

 詩音は満面の笑みで頷くと大きく手を振ったので、その表情に湊も安心したように笑みを返し、

「またね」

 湊は二人に見送られながら部屋を後にした。

 帰宅する為に車を走らせながら湊の胸は自然と弾んでいた。

 詩音との約束が出来たことで自然な流れで和葉とまた会える理由ができたことが嬉しく、気づけば口元には穏やかな笑みが浮かんでいる。

 一方、部屋へ戻った和葉は詩音の嬉しそうな様子を見つめながらも複雑な感情を抱いていた。

 それは、湊への気持ちをまだ整理しきれていないことが影響しているのだけど、それでも、不安で心細かった自分の元へ駆けつけてくれて詩音のことを気遣ってくれた湊の優しさは痛いほどに伝わっているし、何よりも詩音の笑顔を見るたびに次に三人で会える日が楽しみだと思ってしまう。

 戸惑いはあるけれど優先すべきことは何か、それを念頭に置いた上で一旦気持ちを整理しようと思い、今は考えるのを止めた。
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