約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 車で一時間ほど走り目的地に着くと、土曜日ということもあって遊園地は家族連れで賑わっていた。

 駐車場に車を停め、荷物を持って入園ゲートへ向かう。

 そしてチケットを購入して中へ入ると、動物の着ぐるみたちが来園者を出迎えてくれた。

「わー!」

 詩音は瞳を輝かせながら、あちこちを忙しなく見回しては歓声を上げる。

 そんな中、ふと土産物店の前で立ち止まり、小さな指を伸ばした。

「ママ、しおんあれかぶりたい!」

 視線の先には動物の耳が付いた帽子やカチューシャがずらりと並んでいる。

「詩音、被り物は苦手でしょ? すぐ外しちゃうんだから。それより後でおもちゃを買った方がいいんじゃない?」

 和葉は優しく言い聞かせるものの詩音は首を横に振る。

「やだ! あれがいい!」

 すると、そのやり取りを見ていた湊が穏やかに笑った。

「どれがいい? 好きなの買ってあげるよ」
「ほんと!? わーい!」

 湊の言葉に大喜びでショーケースに駆け寄る詩音を見て和葉は困ったように苦笑した。

「湊さん……」
「せっかく来たんだから、このくらいはいいだろ?」

 そこまで言われてしまうと止めることは出来ず、詩音は湊や和葉と一緒に、「あれがいい」「こっちもかわいい」と楽しそうに選び始めたのだけど、ふいに振り返ると満面の笑みで言った。

「おにーちゃんとママもつけよ?」
「ええ? ママはいいよ」

 遠慮する和葉にはお構いなしに詩音は売り場から商品を手に取る。

「ママはこれ! おにーちゃんはこれ!」

 詩音が和葉に選んだのは、ふわふわの白いうさ耳にリボンが付いたカチューシャだった。

「ちょっと……それは可愛すぎるよ」

 苦笑しながら断るが、

「やだ! ママはこれ!」

 詩音は譲ろうとしない。

 困り果てた和葉を見かねて湊が別の商品を手に取った。

「それじゃあ、これはどうかな?」

 差し出したのはクマ耳の付いた帽子で、しかも、『親子でおそろい!』と書かれたポップが添えられていて大人用と子ども用がセットで並んでいる。

「わあ! みんなおそろい! これにする!」

 すっかりそっちへ興味が移った詩音はうさ耳のカチューシャを戻すと帽子を手に取る中、その無邪気な笑顔とは対照的に和葉は、『親子でおそろい』という文字を見つめたまま胸が小さく高鳴るのを感じていた。

 三人はお揃いの帽子を被り、園内マップを眺めながらゆっくりと歩いていく。

「詩音ちゃんは何乗りたい?」

 湊が尋ねると詩音は園内を見回しながら目を輝かせ、

「あれ! あれがいい!」

 勢いよく指差した先には子供向けのコースターがあった。

 以前訪れたテーマパークでは年齢制限のため乗ることができず、悔しそうにしていたことを和葉は思い出す。

「そうだね。これなら詩音も乗れるよ」
「わーい!」

 今日は乗れると分かった詩音は飛び跳ねるように喜び、三人は列の最後尾へ並んだ。

 約三十分ほど待ち、いよいよ順番が回ってくる直前、目の前でコースターが勢いよく走り出すのを見た詩音の表情がみるみる不安そうに曇った。

「……やっぱりやめる」
「え?」

 和葉はしゃがみ込んで優しく声を掛ける。

「ここまで並んだし、一回だけ乗ってみない?」
「やだ……こわいもん……」

 首を横に振る詩音を見て無理をさせるわけにはいかないと和葉が諦めかけた、その時だった。

 湊が詩音の前にしゃがみ優しく微笑んだ。

「大丈夫。俺が詩音ちゃんを守るから怖くないよ。一緒に乗ってみよう?」

 その頼もしい言葉に詩音は湊の顔をじっと見つめ、やがて小さく頷くとぎゅっと湊の手を握った。

「……おにーちゃんといっしょにのる」
「よし。それじゃあ一緒に楽しもう」

 湊は詩音を安心させるように手を繋いだままコースターへ乗り込み、その姿を見ていた和葉は、

(湊さん、頼もしいな……)

 詩音も同じ気持ちなのだろう。

 湊を見上げる横顔には先程までの怯えた表情は一切無かった。
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