約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 部屋へ戻るなり詩音は待ちきれない様子で紙袋から新しいワンピースを取り出し、寝室へ駆け込むと和葉に手伝ってもらいながら着替え始めた。

 ほどなくして着替えを終えた詩音はくるりと一回転しながら湊の前へ現れる。

「おにーちゃんみて~! しおん、おひめさまみたい?」

 嬉しそうに裾を広げる姿に湊は自然と笑みを浮かべた。

「すごいな。こんなに可愛いお姫様を見るのは初めてだよ」
「良かったね、詩音」
「うん!」

 眠気などどこかへ吹き飛んでしまったようで詩音は満面の笑みを浮かべている。

 その姿を写真に収めたあと和葉は優しく詩音へ声を掛けた。

「そろそろ着替えよう? そのお洋服は明日着るのに汚したら大変だから」
「はーい」

 披露して満足したのか詩音は素直に頷き、再び寝室で元着ていた服へと着替え始めた。

 ちょうどその頃、頼んでいた夕食が部屋へ運ばれてくる。

 そして着替えを終えた詩音と和葉がリビングへ戻ると、テーブルいっぱいに並んだ料理を見て思わず目を丸くした。

「わぁー!」
「凄い……」
「おいしそー!」
「こんなに沢山」

 二人の反応に湊は少し照れくさそうに頭を掻く。

「少し頼み過ぎたかもな。まあ時間はあるし、ゆっくり食べればいいよ」
「ふふ、そうだね」
「それじゃあ食べようか」
「うん」
「いただきまーす!」

 三人は揃って手を合わせ、賑やかな夕食の時間を過ごした。

 和葉は箸を動かしながら、湊と再会してからの日々を思い返す。

 こうして三人で食卓を囲むことがだんだん当たり前のようになり、詩音はすっかり湊に懐き、湊もまた詩音を優しく見守ってくれる。

 そして何より、湊は昔と変わらず自分を想い続けてくれている。

 三人で笑い合う時間が増えるほど和葉の胸にある湊への想いは少しずつ形を変えていく。

(あの時、別れを選ばなければ……)

 そんな、「もしも」が脳裏を過ぎり、自分の選択が間違いだったのでは無いかと胸が締めつけられるのだった。

 夕食を終えると和葉は詩音と一緒に風呂へ入り、その後湊も入浴を済ませた。

 やがて就寝の時間になり、寝室へ向かう和葉と詩音を見送りながら湊はソファーで眠る為に寝床を整えていた。

「それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」

 それぞれ挨拶を交わした、その時だった。

 詩音が不思議そうに首を傾げながら言う。

「おにーちゃんも、こっちでいっしょにねよ?」

 その無邪気な誘いに湊は少し困ったように笑った。

「ごめんね。俺たちは家族じゃないから、一緒のベッドでは寝られないんだ」

 しかし詩音にはその理由が理解出来ない。

「どうして? やだ! おにーちゃんもいっしょがいいよ!」

 必死に訴える詩音に和葉は優しく諭した。

「詩音、お兄ちゃんを困らせちゃ駄目よ。いい子だからママと寝よう? ね?」

 けれど詩音は首を横に振る。

「ママ、いいでしょ? おにーちゃんもいっしょにねよ? しおん、みんないっしょがいいよ……おにーちゃんだけべつなんて、さみしいよ……」

 そして詩音の最後の一言に和葉は何も言えなくなってしまった。
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