約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「……詩音ちゃん……気持ちは嬉しいけど、俺は――」

 湊が困ったように言いかけた、その時だった。

「そうだよね。一人は……寂しいよね」

 湊の言葉を遮るように和葉が静かに口を開く。

「湊さん、こっちで……一緒に寝ませんか?」
「えっ!?」

 思いもよらない誘いに湊は目を丸くした。

「いや、けど……」

 さすがにそれは節度を欠く――そう断ろうとする湊に和葉は優しく微笑んだ。

「詩音は、一度言い出したら聞かないの。きっと湊さんが頷くまで眠らないわ。だから……ね? 湊さんが嫌じゃなかったら……一緒に寝ましょう」

 その言葉を聞いた詩音はパッと表情を輝かせるとベッドから飛び降りて湊の手をぎゅっと握った。

「おにーちゃん、いこ!」

 小さな手に引かれるまま湊はベッドの側まで連れていかれる。

「和葉……」

 なおも戸惑う湊に和葉は申し訳なさそうに目を伏せた。

「詩音が望むことは出来る限り叶えてあげたいの。悲しませたくなくて……。だから、ごめんなさい。一緒に寝るの、付き合ってもらってもいい?」

 その真っすぐな願いを前に湊は、

「……分かった」

 そう頷くと詩音は満面の笑みを浮かべた。

「やったぁ!」

 そして嬉しそうに布団へ潜り込んだ詩音は小さな指で二人の眠る場所を決め始める。

「おにーちゃんはこっちで、ママはこっちね!」

 詩音が真ん中、左に湊、右に和葉という並びになり、三人は川の字になって横になる。

 その光景に満足した詩音は無邪気な笑顔のまま二人を見比べた後で、

「なんか、おにーちゃん、パパみたい! しおんのパパいないから……おにーちゃんがパパになってほしいなぁ」

 あまりにも純粋なその一言に湊と和葉は同時に言葉を失い、互いに視線を合わせることもできず、どこか複雑な表情を浮かべていた。

 そんな気まずい空気を断ち切るように和葉が優しく詩音の頭を撫でる。

「さ、詩音。もう遅いから寝ようね」
「おやすみ、詩音ちゃん」

 そこへ湊もおやすみの挨拶をすると、

「うん、おやすみ!」

 元気よく返事をした詩音は二人に挟まれて安心したように目を閉じ、やがて小さな寝息が規則正しく聞こえ始める。

 けれど詩音とは対照的に湊と和葉はどちらも眠れずにいた。

 静まり返った部屋の中、湊は詩音を起こさないよう小声で囁く。

「……詩音ちゃんも眠ったし、俺はあっちに行くよ」

 そう言ってそっと布団を抜け出してベッドを降りようするその背中を見つめていた和葉は、

「……待って」

 気づけば、無意識に呼び止めていた。
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