約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「……湊、さん……駄目……離して……」

 そう言いながらも和葉は自ら湊の腕を振りほどこうとはしなかった。

 そんな和葉を湊は更に強く抱き締める。

「離さない。和葉が首を縦に振ってくれるまで」
「……湊さん……」

 耳元で囁かれた言葉に和葉の鼓動は大きく音を立てた。

 抱き締められた腕も、伝わってくる温かな体温も、あの頃から何一つ変わっていない。

 別れを決めたあの日、もう二度とこうして湊に触れることはないのだと思っていた和葉。

 再会したあの日でさえ、まさかもう一度湊と向き合う日が来るなんて思ってもいなかった。

 本当は――もう一度あの頃に戻りたい。

 その気持ちが和葉の中にないわけではない。

 むしろ、こうして湊に抱き締められている今、その想いは隠しきれないほど膨れ上がっている。

 けれど、今はもう、あの頃とは違う。

「…………駄目だよ……」

 和葉は湊の胸元に顔を埋めたまま、震える声で呟いた。

「もう……あの頃とは、違うもの……」
「何も変わらない」

 即座に返された言葉に和葉は顔を上げる。

「変わるわ……。私には詩音がいるし……湊さんには、社長としての立場がある。これからだって、きっと……」
「そんなことは関係ない」

 和葉の言葉を遮るように湊が言った。

 その声には今まで押し込めていた感情が滲んでいる。

「俺が聞きたいのは、お前の気持ちだけなんだ」
「……っ」
「和葉は、俺のことが嫌いなのか?」

 真っ直ぐに見つめられた和葉は息を呑む。

「顔も見たくないのか?」
「……違う」
「こうして触れられることも、嫌なのか?」

 一つ一つ問い掛けられるたびに和葉の胸が苦しくなる。

「……嫌いだなんて……そんなこと、ない……」

 涙で滲んだ瞳を伏せながら和葉は小さく首を横に振る。

「会えたとき……驚いたけど……嬉しかった……それに……こうして、触れられることだって……」

 和葉がそこまで口にした瞬間、

「だったら、何も問題はないだろ?」

 湊はそう言って和葉の身体をゆっくりと離し、真正面から向かい合う。

 逃げることも目を逸らすこともできない距離で湊は和葉を見つめ、

「もう一度やり直そう、俺たち」
「……湊、さん……」

 和葉の瞳から零れ落ちる涙を湊は指先でそっと掬い、その優しく触れた指先が頬を伝い、そのまま顎へと滑っていく。

「…………っ」

 軽く顎を持ち上げられた和葉はされるがまま。

 逃げることもしない和葉は湊によって唇を塞がれ、

「……んっ、」

 そのままキスをする。

 それは二人にとって、言葉よりも確かな答えだった。
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