約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 三人でベッドに入ると詩音はそれだけで安心したのか、ほどなくして寝息を立て始めた。

 小さな手でぎゅっと手を握られてしまった二人は身動きが取れず、顔を見合わせ思わず小さく笑うと、そのまま詩音を起こさないよう静かに横になった。

 詩音の寝息だけが響く部屋の中、ふいに湊が上半身を起こして和葉へ視線を向ける。

「……和葉」

 小さな声で呼ばれた和葉も湊の方へ顔を向けた。

「何?」
「……悪かった。さっきは、強引なことをして」

 湊が申し訳なさそうに眉を下げて謝ると、和葉は静かに首を横に振った。

「…………ううん。大丈夫」
「ありがとう…………その、さっきの続きだけど……返事を聞かせてほしい」
「…………」
「俺の気持ちは、あの頃から変わってない。むしろ、時間が経つほど大きくなるばかりだ」

 湊は一度詩音へと視線を落とす。

「何があっても守るよ、和葉のことも詩音ちゃんのことも。絶対に後悔させたりしない。だから……俺ともう一度やり直してほしい」

 そして、真っ直ぐな瞳で和葉を見つめた。

「……頼む」

 その一言が、和葉の胸に深く響いた。

 自分のことを想ってくれている気持ちは痛いほど伝わっていた。

 そして何より――自分もまだ湊のことが好きなのだと改めて実感していた。

 自分一人だけなら迷わなかったかもしれないけれど、今は詩音がいる。

 だからこそ、簡単には答えを出せなかった。

 これから先、湊と付き合うことで詩音が傷つくようなことがあれば、迷わず別れを選ぶことになる。

 それだけは、どうしても譲れない。

 和葉は暫く黙ったあと、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「……私の優先順位は詩音だから…………詩音が幸せになれる選択をしたいって思ってる……だから……どうしても、詩音と湊さんを天秤にかけてしまうことはあると思うの」

 湊は和葉の言葉を黙って聞いていく。

「もし付き合うことで、詩音に何か不利益なことが起きたら……私は詩音の為に別れることを選ぶかもしれない…………湊さんを一番に想えない場面があるかもしれない…………それでも、いい?」

 和葉が不安そうに尋ねると、湊は一瞬も迷わなかった。

「ああ、それで構わない」

 そして、握られたままの詩音の手をそっと見つめ、

「俺にとっても詩音ちゃんは大切だから、不幸にはさせない。和葉が別れを選ぶことがないよう、必ず二人を幸せにしてみせるよ。だから……俺を信じてほしい」

 その言葉に和葉の胸がじんと熱くなった。

 湊の揺るぎない決意は和葉にしっかりと伝わったからなのか和葉の表情は和らいでいき、

「…………もう一度……お願いします」

 湊を信じたい思いもあって、もう一度付き合うことを決めたのだった。
< 42 / 71 >

この作品をシェア

pagetop