約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「湊さん、折角だけど……詩音のためにも我儘ばかり聞くのは……」

 和葉が困ったように湊を見上げると、

「これは我儘じゃないよ」

 キッパリ否定した。

「え?」
「俺と初めて水族館に来た記念として買うんだ。それでも駄目か?」
「…………」

 そう言われてしまうと和葉に返す言葉がなかった。

 隣では詩音が不安そうに二人を見上げている。

「ママ、だめ?」

 小さな声で尋ねられて和葉はますます困ってしまう。

「……そういうことなら」

 結局和葉が折れる形になり、湊と詩音はぬいぐるみを選んでいく。

(これで良かったのかな……)

 そう思うも、二人の楽しそうな様子を前にするとこれで良かったんだと納得した。

 その後も三人は水族館を存分に楽しみ、そろそろ出ようかという話をしていた時、湊のスマートフォンが鳴った。

「悪い、ちょっと電話に出てくる」
「分かった、ここで待ってるね」
「ああ、すぐ戻る」

 湊は二人から少し離れた場所へ移動して電話を始めたので、和葉と詩音はその場で湊を待っていた。

 すると詩音が何かに気づく。

「あれ……?」

 さっきまで確かに抱えていたはずのイルカのぬいぐるみがどこにもないのだ。

 詩音は慌てて周囲を見回したけれど、ぬいぐるみは見つからない。

「…………」

 幼いながらも詩音は分かっていた。

「記念だから」と買ってくれた、大切なぬいぐるみだということを。

 だからこそ、なくしてしまったことを言い出しにくかったのだろう。

「……あっちかも」

 詩音は和葉に声を掛けることが出来ないまま、そっとその場を離れてしまった。

 一方その頃、電話を終えた湊が戻って来る。

「お待たせ――」

 しかし、そこにいるはずの詩音の姿がない。

「……あれ? 詩音ちゃんは?」
「え……?」

 湊に問われた和葉がすぐ傍に居るはずの詩音に視線を移すもそこには誰も居なかった。

 その瞬間、和葉の顔から一気に血の気が引いた。

「嘘……」

 周囲を見回すもどこにもいない。

「私、ちゃんと見ていたのに……」
「落ち着いて」
「でも……!」

 今にも泣き出しそうな和葉を見た湊は、

「まずはスタッフに館内放送をお願いする」
「…………」
「絶対に見つかる、大丈夫だから」

 安心させるようにそう告げると、すぐに近くのスタッフの元へ向かった。

「すみません!」

 ただならぬ様子にスタッフが振り返る。

「どうされましたか?」
「娘とはぐれました。館内放送をお願いできますか?」
「かしこまりました。お子様のお名前と服装を教えていただけますか?」

 湊が落ち着いて名前や特徴を伝えていく中、どうか無事でいてと和葉はただひたすら願っていた。
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