約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 アパートに到着した二人は車を降りると周囲を警戒しながら部屋の中へ入った。

 大切な物や必要な物は昨夜ほとんど運び出してあるけれど、今一度必要な物が無いか確認していく。

 服などは洗濯をすれば着られないこともないが、下着類は誰かが触れたことを考えるとどうにも使う気にはなれず処分する方向に。

 日用品や家具なども湊と話し合った末、必要があるものは買い直せば良いという判断で残しておく物はほぼ無く処分することになった。

「もうこんな時間……」

 片付けをしながら時計を確認すると、時間が迫っていることに気づく。

「そろそろ出た方がいいな」
「そうだね」

 こうして二人は作業を止めて再び保育園へ向かうことにした。

 和葉が玄関の鍵を閉めて振り返ると、湊はいつになく険しい表情を浮かべていた。

「どうかした?」

 そう和葉が尋ねると我に返ったように表情を緩ませた湊は、

「いや、何でもない。行こうか」

 何でも無いとだけ答えると車へ向かって歩いていく。

 そんな湊に違和感を覚えつつも和葉はそれ以上は尋ねなかった。

 車に乗り込むと湊はエンジンを掛けながらチラリと辺りを見回した。

 実は先程、どこからか視線のようなものを感じた湊は辺りを警戒していたのだ。

 けれど今は特に何も感じなくなったので車を発進させた。

 今回の空き巣の件も、今の視線も、もしかしたら父親が絡んでいるかもしれない。

 そんな考えが湊の頭をよぎる。

 色々勘付いている素振りを見せている父親は、実は既に和葉の存在に気づいているのではないか。

 その可能性は捨てきれなかった。

 そしてそれと同時に、和葉が自分の前から突然いなくなったことも、やはり父親が絡んでいるのではないか。

 再会した和葉に詩音という娘がいた。

 詩音がもしかしたら自分の子供かもしれないという疑惑がある今、和葉が自らの意思で自分の元を離れる選択をしたとは思えなかったのだ。

 もちろん、まだ確証はない。

 だからこそ、きちんと確かめなければならない。

 湊はハンドルを握る手に力を込めた。

 今日の見合いの後、父親ときちんと話をする。

 今後何があっても縁談は受けない。

 和葉のことを話した上で、認めてくれないなら鳴海の姓も、社長の座も捨てる覚悟があるということを伝える。

 これらを話すと決めていた湊の表情は再び険しいものになる。

「……湊さん?」

 ふいに隣から声をかけられ湊は我に返った。

「どうした?」
「さっきから、少し怖い顔してる」
「そうか?」
「うん。何か心配ごと?」
「……まあ、その、見合いがあるだろ? それについて少し考えてた」
「そっか」
「和葉」
「何?」
「今日の夜、話がある。詩音ちゃんが寝たら、話そう」
「……分かった」

 真剣な表情の湊の言葉に和葉は何かを悟ったのかもしれない。

 話というのが何かを聞くこともなく頷くとそのまま前を向き、二人は保育園に着くまで会話を交わすことは無かった。
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