レッドパンダ・ブレイク ※本格・長編ファンタジー戦記、一括掲載
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居住衛星都市プラネット3-4は今まさに崩壊の過程にあった。
不幸なことに、敵国のテロルに事故災害が重なったのだ。
このプラネットは最悪、沈む。
セリム・トレルビーは愛機ハロルド号のコックピットから戦況を憂慮していた。
年の頃、十四・五歳だろうか。しかし木精種族(リグニム)である彼は、人間の基準からの類推はあてにならない。きめの細かな白い肌には光のかげんで、うっすらと美しい木目が浮かび上がる。髪はツヤのある暗緑色。整いすぎた容姿が内面の冷酷さを予感させるような、種族を超えた美少年だった(ちなみに木精の近縁種である花妖も美しさで知られる)。金色に縁取りした純白の膝丈コートに身を包み、外見年齢にそぐわぬ船長の風格を漂わせている。
「展開は、最悪か……」
パイロットシートに深々と身を沈め、紅葉の瞳はあくまでも冷静だった。それでも人形のように変化のない顔立ちに刹那の翳りがはしったのは、過去の体験が蘇ったからなのかもしれなかった。
「ひどいことっていうのは、世界のどこででも起きるんだ」
その感情は表情ではなく、行動に直結する。
ハロルド号は急速に加速し、ブレイク・ハートとの合流予定地点へと向かう。空中のプラネットの外周を斜めに迂回し、爆煙と閃光を突っ切っていく。二十面体の球形構造物の金属質の表面に孤影を投げかけながら。
(うん?)
胸騒ぎがした。
セリムの直感が敵襲を告げる。
「それで不意打ちのつもりかッ!」
途中で飛行型ゴーレムが襲いかかってきたのを、甲板上に旋回するミニガンで迎撃する。
最も小さなボート級の船であるハロルド号は護衛のゴーレムを搭載していない。
引き金を引くたびに、ゴーレムの体表装甲で火花が散る。それでも宙返りして前方に回りこんでくる。細身で尾の長い有翼の攻撃機械は小回りがきく上、加速が良い。幸いこのタイプは陸戦型ゴーレムの輸送がメインの設計で、火器の類は持っていないが……。
「ええい!」
セリムはとっさに舵をきる。すれ違いざま、翼の先についたカッター・ブレードで側舷に切りつけてきた。火器はなくとも接近戦用の凶器は具えているというわけだ。小型船にとっては充分に脅威であった。
うっとおしいことこの上ない。
「このっ」
瞬く間にミニガンが再度火を噴き、貴重な弾丸を叩き込む。この護身用武装の実体弾は装弾数も限られているのだ。予備を含めて二十四本の近距離ロケット魚雷は、敵艦との空戦でとっくに使い果たしている。
「こんなときに!」
陶器細工の翼竜のようなゴーレムは、黒煙を上げながらもなお食い下がってくる。
セリムは痺れを切らし、艦首を引き上げる。胴体着陸できる頑丈無比な船底で、のしかかるように体当たりを食らわせる。二倍半の目方で押しつぶし、プレスにかけたように吹き飛ばしてしまう。敵ゴーレムは空中に落下しながら爆発する。破片は暗黒の大地、辺獄エリアの底へと返っていく。まるで本来の住処に帰るかのように。
「邪魔するから、いけないんだ」
セリム・トレルビーは非情に呟いて、乱れた針路を修正する。時間をロスしてしまったが、一分足らずで合流地点に到着するだろう。
居住衛星都市プラネット3-4は今まさに崩壊の過程にあった。
不幸なことに、敵国のテロルに事故災害が重なったのだ。
このプラネットは最悪、沈む。
セリム・トレルビーは愛機ハロルド号のコックピットから戦況を憂慮していた。
年の頃、十四・五歳だろうか。しかし木精種族(リグニム)である彼は、人間の基準からの類推はあてにならない。きめの細かな白い肌には光のかげんで、うっすらと美しい木目が浮かび上がる。髪はツヤのある暗緑色。整いすぎた容姿が内面の冷酷さを予感させるような、種族を超えた美少年だった(ちなみに木精の近縁種である花妖も美しさで知られる)。金色に縁取りした純白の膝丈コートに身を包み、外見年齢にそぐわぬ船長の風格を漂わせている。
「展開は、最悪か……」
パイロットシートに深々と身を沈め、紅葉の瞳はあくまでも冷静だった。それでも人形のように変化のない顔立ちに刹那の翳りがはしったのは、過去の体験が蘇ったからなのかもしれなかった。
「ひどいことっていうのは、世界のどこででも起きるんだ」
その感情は表情ではなく、行動に直結する。
ハロルド号は急速に加速し、ブレイク・ハートとの合流予定地点へと向かう。空中のプラネットの外周を斜めに迂回し、爆煙と閃光を突っ切っていく。二十面体の球形構造物の金属質の表面に孤影を投げかけながら。
(うん?)
胸騒ぎがした。
セリムの直感が敵襲を告げる。
「それで不意打ちのつもりかッ!」
途中で飛行型ゴーレムが襲いかかってきたのを、甲板上に旋回するミニガンで迎撃する。
最も小さなボート級の船であるハロルド号は護衛のゴーレムを搭載していない。
引き金を引くたびに、ゴーレムの体表装甲で火花が散る。それでも宙返りして前方に回りこんでくる。細身で尾の長い有翼の攻撃機械は小回りがきく上、加速が良い。幸いこのタイプは陸戦型ゴーレムの輸送がメインの設計で、火器の類は持っていないが……。
「ええい!」
セリムはとっさに舵をきる。すれ違いざま、翼の先についたカッター・ブレードで側舷に切りつけてきた。火器はなくとも接近戦用の凶器は具えているというわけだ。小型船にとっては充分に脅威であった。
うっとおしいことこの上ない。
「このっ」
瞬く間にミニガンが再度火を噴き、貴重な弾丸を叩き込む。この護身用武装の実体弾は装弾数も限られているのだ。予備を含めて二十四本の近距離ロケット魚雷は、敵艦との空戦でとっくに使い果たしている。
「こんなときに!」
陶器細工の翼竜のようなゴーレムは、黒煙を上げながらもなお食い下がってくる。
セリムは痺れを切らし、艦首を引き上げる。胴体着陸できる頑丈無比な船底で、のしかかるように体当たりを食らわせる。二倍半の目方で押しつぶし、プレスにかけたように吹き飛ばしてしまう。敵ゴーレムは空中に落下しながら爆発する。破片は暗黒の大地、辺獄エリアの底へと返っていく。まるで本来の住処に帰るかのように。
「邪魔するから、いけないんだ」
セリム・トレルビーは非情に呟いて、乱れた針路を修正する。時間をロスしてしまったが、一分足らずで合流地点に到着するだろう。