レッドパンダ・ブレイク ※本格・長編ファンタジー戦記、一括掲載
3
「ちぇい! ちぇえい! ちぇい! ちぇいッ!」
激しく旋舞するネズミ花火が次々にゴーレムを打ち倒していく。
脱出経路の途上での遭遇は、終始ブレイクが優勢だった。
陶器の戦闘人形たちはすばしこい動きに翻弄され、ミニガンやブレードは虚しく宙を穿つばかりだ。出くわしたが運の尽き。超一級の戦闘員に、魂のない人形が敵うはずもない。強烈な物理打撃にセラミックスの外装を叩き割られ、内部機構までも破砕される。
四体のうち二体までは戦闘不能。一体は煉瓦舗装にひっくり返り、もう一体は頭から石壁にめり込んで黒煙を立てている。無念そうに末期の放電の青白い火花を首の後ろあたりでパチパチさせている。
「オレの毛皮が赤いのはなァッ! 赤信号だ危険だぞって意味なんだよっ!」
ブレイク・ハートは三節棍を振り回し、飛び跳ねながら旋回する。三本の棒を鎖でつないだ肉弾戦兵器は、さながら猛蛇のように変幻自在だ。炎のエレメントの力を宿して火花を吹き上げ、ロケットのように衝突する。
衝撃で肘から吹き飛ばされた無機物の片腕が、天井に跳ねて漆喰に傷をつける。それが落下するより早く、一直線に伸びた先端が、彗星のように胸部を打ちぬく。三対目はがっくりと両膝を突いて動かなくなる。
「ラストぉッ!」
ブレイクは振り返りざま、横なぎに振り払う。後方からブレードを振り上げて迫った四対目は、燃える半円を脇に受けて転倒した。
「まいったか! こンのっ!」
ヒビの入った胸に燃える隕石のような縦一撃。最後の攻撃対象はぼんっと白い煙を吐いて、活動を停止する。
「よし、一丁っ!」
ブレイクは甲高く勝利の雄叫びを上げ、出口に向かって突進する。
疾駆していく煉瓦の道、目的の合流地点は目と鼻の先だ。
光が見えた。四角く切り取られた青い空が。
「でいっ!」
短い後足でめいっぱいに踏み切り、幅跳びのように空中に飛び出す。その様、さながら撃ち出された砲弾だ。物理法則にしたがって、放物線に落下する。
ハロルド号がそこに待っていた。
ブレイクはくるりと受身をとり、甲板に着地した。
『おかえり』
セリム・トレルビーがコックピットから告げる。声は甲板との通信用の有線からだ。かすかに微笑んだ気配がした。
「おうよ」
ブレイク・ハートは覇獣の闘争心をみなぎらせて、すっくと直立する。小動物ながらに不敵な面構えである。黄金の視線は上空の戦闘空域を鋭く睥睨していた。
『急ごう。ブレイク、つかまってて。船を戦線の正面に回す』
ブレイクは爪のある腕で甲板上のバーにつかまり、姿勢を低くする。空いたほうの手で命綱を手繰りよせた。五十センチ先にはブレイク専用の回転砲、ハロルド号の主砲エイハブが設置されている。火のエレメントを弾丸のように撃ちだすエレメント魔法兵器。誰が使っても威力に大差がない技法(テクネー)による兵器とは異なり、扱い手次第で強力無比な代物だ。
赤き砲手は砲撃魔方陣の上に陣取った。そこが砲座なのだ。ブレイクは主砲の末端にある、縦二本に並行した取っ手をつかむ。三本の足のある主砲エイハブは一角獣の角のように伸びていて、船首から砲身の先をはみ出させている。砲身の基部には四本の細いパイプが生えていて、その口からエレメントの炎が吹き上がる。
「ちぇい! ちぇえい! ちぇい! ちぇいッ!」
激しく旋舞するネズミ花火が次々にゴーレムを打ち倒していく。
脱出経路の途上での遭遇は、終始ブレイクが優勢だった。
陶器の戦闘人形たちはすばしこい動きに翻弄され、ミニガンやブレードは虚しく宙を穿つばかりだ。出くわしたが運の尽き。超一級の戦闘員に、魂のない人形が敵うはずもない。強烈な物理打撃にセラミックスの外装を叩き割られ、内部機構までも破砕される。
四体のうち二体までは戦闘不能。一体は煉瓦舗装にひっくり返り、もう一体は頭から石壁にめり込んで黒煙を立てている。無念そうに末期の放電の青白い火花を首の後ろあたりでパチパチさせている。
「オレの毛皮が赤いのはなァッ! 赤信号だ危険だぞって意味なんだよっ!」
ブレイク・ハートは三節棍を振り回し、飛び跳ねながら旋回する。三本の棒を鎖でつないだ肉弾戦兵器は、さながら猛蛇のように変幻自在だ。炎のエレメントの力を宿して火花を吹き上げ、ロケットのように衝突する。
衝撃で肘から吹き飛ばされた無機物の片腕が、天井に跳ねて漆喰に傷をつける。それが落下するより早く、一直線に伸びた先端が、彗星のように胸部を打ちぬく。三対目はがっくりと両膝を突いて動かなくなる。
「ラストぉッ!」
ブレイクは振り返りざま、横なぎに振り払う。後方からブレードを振り上げて迫った四対目は、燃える半円を脇に受けて転倒した。
「まいったか! こンのっ!」
ヒビの入った胸に燃える隕石のような縦一撃。最後の攻撃対象はぼんっと白い煙を吐いて、活動を停止する。
「よし、一丁っ!」
ブレイクは甲高く勝利の雄叫びを上げ、出口に向かって突進する。
疾駆していく煉瓦の道、目的の合流地点は目と鼻の先だ。
光が見えた。四角く切り取られた青い空が。
「でいっ!」
短い後足でめいっぱいに踏み切り、幅跳びのように空中に飛び出す。その様、さながら撃ち出された砲弾だ。物理法則にしたがって、放物線に落下する。
ハロルド号がそこに待っていた。
ブレイクはくるりと受身をとり、甲板に着地した。
『おかえり』
セリム・トレルビーがコックピットから告げる。声は甲板との通信用の有線からだ。かすかに微笑んだ気配がした。
「おうよ」
ブレイク・ハートは覇獣の闘争心をみなぎらせて、すっくと直立する。小動物ながらに不敵な面構えである。黄金の視線は上空の戦闘空域を鋭く睥睨していた。
『急ごう。ブレイク、つかまってて。船を戦線の正面に回す』
ブレイクは爪のある腕で甲板上のバーにつかまり、姿勢を低くする。空いたほうの手で命綱を手繰りよせた。五十センチ先にはブレイク専用の回転砲、ハロルド号の主砲エイハブが設置されている。火のエレメントを弾丸のように撃ちだすエレメント魔法兵器。誰が使っても威力に大差がない技法(テクネー)による兵器とは異なり、扱い手次第で強力無比な代物だ。
赤き砲手は砲撃魔方陣の上に陣取った。そこが砲座なのだ。ブレイクは主砲の末端にある、縦二本に並行した取っ手をつかむ。三本の足のある主砲エイハブは一角獣の角のように伸びていて、船首から砲身の先をはみ出させている。砲身の基部には四本の細いパイプが生えていて、その口からエレメントの炎が吹き上がる。