レッドパンダ・ブレイク ※本格・長編ファンタジー戦記、一括掲載
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「GO!」
ハロルド号は大気の物理的な風の流れと第一魔法元素エーテルの気流を計算し、修正装置で軌道を調整しながら加速する。折りたたんでいた帆も、一対の翼のように展開した。。主な敵の攻撃は上方からきているのだ。斜めに上昇していけば、敵艦に辿り着ける。
「どけどけどけどけどけっ!」
回転砲が甲板の魔法陣の上で銃火を噴く。砲撃魔法陣の上でなら、自由な方向転換が可能なのだ。進路妨害や横から襲いかかる人工の翼竜を、片端から撃ち落していく。ボロ雑巾のように吹き飛ばす。落下していく三角形の翼が、キラリと陽光を照り返した。
「ん」
爆弾を抱いた飛行型ゴーレム。体当たりする気か。大慌てで撃墜する。爆発した破片が甲板にパラパラと降り注ぐ。
「あいつら!」
ブレイクは焦りと呆れが半々に入り混じった顔で、V字の眉をひそめる。
『うん。なりふりかまわずに、全面攻撃にでてきたみたいだね』
輸送用のゴーレムをミサイル代わりに突っ込ませるあたり、何が何でもこちらを潰す木なのだ。恒例の小競り合いで済ませるつもりはないようだった。
そのまま斜めに上昇し、敵戦艦の下から接近する。
降り注ぐミサイルの雨。応戦するエレメント・ガトリングの連射が撃ち落していく。空は爆光と黒煙に満たされ、砲声と爆発音が耳をつんざくばかりだ。
『見えた』
敵国の空中戦艦一隻。味方の攻撃艇が複数で遠巻きに包囲していたが、防御の固さに攻めあぐねている。
いまこそハロルド号の出番である。機動力でも火力でも、強襲突撃こそは得意分野だ。
「よおし!」
ブレイクはさっそく、攻撃を開始する。
たっぷり二百メートルはある敵艦。ハロルド号の二十倍を超える大きさだ。主砲エイハブからの集中砲火にもびくともしない。
「なんだよ、アレ」
ブレイクは片眉を上げる。
弾丸を一箇所に集中すると壁面にシールド魔法陣が発生し、撃ちこまれた火のエレメントを相殺してしまうのだ。
『防御機能、みたいだね』
セリムの冷静な声が砲座脇の有線連絡から答える。
『一点に集中攻撃されると、自動的に発生するタイプだよ。一定時間あたりのダメージが閾値を越えたときだけシールド防御がなされる』
テクネー魔法に明るいセリムはそんなふうに分析する。ハロルド号は彼の作品である。
ブレイクは砲身を左右に動かし、攻撃ポイントを往復させる。
「だめか……」
攻撃点を動かしていけばシールドは発生しない。だが熱量が足りない。いくら往復させて同じ場所をなぞっても、熱が次の弾丸が当たる前に逃げてしまうのだ。この重装甲を破るためには集中砲火で、間髪いれずに大量の弾丸を叩き込む他ない。
それでもまだ打つ手はある。
『近づこう。もっと近くからなら』
セリムはミニガンで敵ミサイルを誘爆させながら告げた。このミニガンは小回りがきくから、防御にはもってこいである。火薬を載せているミサイルならば、爆発させるのにさほどの威力を必要としない。問題は実体弾が残り少ないことだった。
「そうだな。至近距離なら……」
ブレイクは砲座を前方に進め、艦首より下の線を狙いやすいように調整する。
ハロルド号は敵の舷側に沿いながら、一直線の射撃を食らわせていく。跳弾は鉄の壁にバウンドして、前方へと飛んでいく。こんな至近距離からの攻撃も、丈夫過ぎるぶ厚い鋼鉄板に穴を開けるには至らない。
だが有効ではある。装甲板の表面が削れているのが目視できた。
「もう一周!」
敵艦船尾で宙返りし、元来た進路でとって返す。先ほどの連射でつけた一直線の傷跡をなぞり、寸分たがわず火線を叩き込んでいく。それでもまだ、足りない。
貫通には至らなくとも、はっきりとした溝ができて、削れて薄くなってきている。
敵もこちらの意図に気がついたらしく、飛行用ゴーレムが急行してくるのが見えた。
あと一回が限度だろう。
ブレイクは操縦コックピットの相方に怒鳴る。
「セリム!」
セリム・トレルビーはうなずき、レバーを操作した。
ハロルド号の船尾には折りたたみの鉤爪がある。元は着陸するときに地面を引っかいて減速するためのものだ。だがそれは攻撃にも使えるようになっていて、いっぱいに伸ばせば接近戦用の武器にもなる。
エレメントの火線が同じラインに三度目の攻撃を加える。そのすぐあとを追うように、鉤爪が引っかいていく。ちょうどミシン目をカッターで切るみたいに。切れ味の良い鉤爪は火花を上げて鋼鉄の壁を切り裂いていく。
一直線に最後の二段攻撃を終えると、ハロルド号は素早く離脱する。
距離をとって、再度砲撃を加える。ゴーレムをかわして飛び回りながらも、ブレイクの操る回転砲の照準は見事なものだ。ほとんど破れた側面の切れ目を、左右に往復しながら火炎のエレメントが叩く。
『やっちゃえ! ブレイク!』
セリムが柄にもなく叫んだ。
レッドパンダ・ブレイクは野獣の咆哮を上げて撃ちまくる。
ついに敵艦は火を噴いた。
傷口が熱で赤く光り、次いで爆炎をあげる。爆発は攻撃ラインから船体全体に広がり、破裂する風船のように瓦解する。轟音を立てて鉄の破片をばら撒きながら、真ん中で二つに折れる。撃沈された空中戦艦は基底の大地、辺獄へと落下していった。
「GO!」
ハロルド号は大気の物理的な風の流れと第一魔法元素エーテルの気流を計算し、修正装置で軌道を調整しながら加速する。折りたたんでいた帆も、一対の翼のように展開した。。主な敵の攻撃は上方からきているのだ。斜めに上昇していけば、敵艦に辿り着ける。
「どけどけどけどけどけっ!」
回転砲が甲板の魔法陣の上で銃火を噴く。砲撃魔法陣の上でなら、自由な方向転換が可能なのだ。進路妨害や横から襲いかかる人工の翼竜を、片端から撃ち落していく。ボロ雑巾のように吹き飛ばす。落下していく三角形の翼が、キラリと陽光を照り返した。
「ん」
爆弾を抱いた飛行型ゴーレム。体当たりする気か。大慌てで撃墜する。爆発した破片が甲板にパラパラと降り注ぐ。
「あいつら!」
ブレイクは焦りと呆れが半々に入り混じった顔で、V字の眉をひそめる。
『うん。なりふりかまわずに、全面攻撃にでてきたみたいだね』
輸送用のゴーレムをミサイル代わりに突っ込ませるあたり、何が何でもこちらを潰す木なのだ。恒例の小競り合いで済ませるつもりはないようだった。
そのまま斜めに上昇し、敵戦艦の下から接近する。
降り注ぐミサイルの雨。応戦するエレメント・ガトリングの連射が撃ち落していく。空は爆光と黒煙に満たされ、砲声と爆発音が耳をつんざくばかりだ。
『見えた』
敵国の空中戦艦一隻。味方の攻撃艇が複数で遠巻きに包囲していたが、防御の固さに攻めあぐねている。
いまこそハロルド号の出番である。機動力でも火力でも、強襲突撃こそは得意分野だ。
「よおし!」
ブレイクはさっそく、攻撃を開始する。
たっぷり二百メートルはある敵艦。ハロルド号の二十倍を超える大きさだ。主砲エイハブからの集中砲火にもびくともしない。
「なんだよ、アレ」
ブレイクは片眉を上げる。
弾丸を一箇所に集中すると壁面にシールド魔法陣が発生し、撃ちこまれた火のエレメントを相殺してしまうのだ。
『防御機能、みたいだね』
セリムの冷静な声が砲座脇の有線連絡から答える。
『一点に集中攻撃されると、自動的に発生するタイプだよ。一定時間あたりのダメージが閾値を越えたときだけシールド防御がなされる』
テクネー魔法に明るいセリムはそんなふうに分析する。ハロルド号は彼の作品である。
ブレイクは砲身を左右に動かし、攻撃ポイントを往復させる。
「だめか……」
攻撃点を動かしていけばシールドは発生しない。だが熱量が足りない。いくら往復させて同じ場所をなぞっても、熱が次の弾丸が当たる前に逃げてしまうのだ。この重装甲を破るためには集中砲火で、間髪いれずに大量の弾丸を叩き込む他ない。
それでもまだ打つ手はある。
『近づこう。もっと近くからなら』
セリムはミニガンで敵ミサイルを誘爆させながら告げた。このミニガンは小回りがきくから、防御にはもってこいである。火薬を載せているミサイルならば、爆発させるのにさほどの威力を必要としない。問題は実体弾が残り少ないことだった。
「そうだな。至近距離なら……」
ブレイクは砲座を前方に進め、艦首より下の線を狙いやすいように調整する。
ハロルド号は敵の舷側に沿いながら、一直線の射撃を食らわせていく。跳弾は鉄の壁にバウンドして、前方へと飛んでいく。こんな至近距離からの攻撃も、丈夫過ぎるぶ厚い鋼鉄板に穴を開けるには至らない。
だが有効ではある。装甲板の表面が削れているのが目視できた。
「もう一周!」
敵艦船尾で宙返りし、元来た進路でとって返す。先ほどの連射でつけた一直線の傷跡をなぞり、寸分たがわず火線を叩き込んでいく。それでもまだ、足りない。
貫通には至らなくとも、はっきりとした溝ができて、削れて薄くなってきている。
敵もこちらの意図に気がついたらしく、飛行用ゴーレムが急行してくるのが見えた。
あと一回が限度だろう。
ブレイクは操縦コックピットの相方に怒鳴る。
「セリム!」
セリム・トレルビーはうなずき、レバーを操作した。
ハロルド号の船尾には折りたたみの鉤爪がある。元は着陸するときに地面を引っかいて減速するためのものだ。だがそれは攻撃にも使えるようになっていて、いっぱいに伸ばせば接近戦用の武器にもなる。
エレメントの火線が同じラインに三度目の攻撃を加える。そのすぐあとを追うように、鉤爪が引っかいていく。ちょうどミシン目をカッターで切るみたいに。切れ味の良い鉤爪は火花を上げて鋼鉄の壁を切り裂いていく。
一直線に最後の二段攻撃を終えると、ハロルド号は素早く離脱する。
距離をとって、再度砲撃を加える。ゴーレムをかわして飛び回りながらも、ブレイクの操る回転砲の照準は見事なものだ。ほとんど破れた側面の切れ目を、左右に往復しながら火炎のエレメントが叩く。
『やっちゃえ! ブレイク!』
セリムが柄にもなく叫んだ。
レッドパンダ・ブレイクは野獣の咆哮を上げて撃ちまくる。
ついに敵艦は火を噴いた。
傷口が熱で赤く光り、次いで爆炎をあげる。爆発は攻撃ラインから船体全体に広がり、破裂する風船のように瓦解する。轟音を立てて鉄の破片をばら撒きながら、真ん中で二つに折れる。撃沈された空中戦艦は基底の大地、辺獄へと落下していった。