レッドパンダ・ブレイク ※本格・長編ファンタジー戦記、一括掲載
10
 病院の手術室の前で。
「オレの責任だぜ……」
 がっくりとうなだれるブレイクにセリムは冷たく答えた。
「そうだね。敵を甘く見すぎたんだ。ちゃんと相談もしないなんて、どれだけ慌ててたんだい? 頭に血が上るからそうなるんだ」
 相方に蚊帳の外にされたことで、セリムは少しばかり腹を立てている様子だった。
「オレだって、まさかよぅ、あんな……」
 ブレイク・ハートは両手で赤い頭を抱えている。
 敵の狙いは自分のはずだった。
 要求どおり自分が出て行けば、人質は放棄すると思い込んでいたのだ。
 最悪、自分が殺されても……こんなことになるとは……。
 なんのメリットもないのに、子供の人質を撃つなどとは思ってもみなかった。
 敵に良識があるなどと、常識が通用するなどと考えたのが馬鹿だったのだ。
「ヴァーツラフさん……」
 ブランシュが慰めるようにブレイクの背中を撫でる。
 ブレイクはトーンの低い声で答えた。金色の目を光らせて。
「その名前で呼ばないでくれ……オレはブレイク・ハート(ぶっ潰れた心)だ……」
 彼は両親には会わずに、行き違いにその場を後にした。


11
 ストロモフカ、そしてアル・カーヒラの一部地域で枯葉病の蔓延が認識されたのは翌日のことだった。各地で暴動が発生し、特にプレート4では人間種族の襲撃事件が相次いだ。
 そして不可思議なことに、ルテティアの爆撃軍はストロモフカからの撤退を開始したのであった。

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