黒猫と星は凪いでいる
【オール】
私は、今とても興味のあるものがある。契約者のシェナだ。
彼女はいつも静かで必要以上に物を話さない。こんな契約者初めてだった。
普通の契約者は、人間と話さないことがあってもその分だけ精霊と話す。なのに、シェナはほとんど人と離さない上に精霊である私とも話さないのだ。それほどに彼女は人見知りで警戒心が強い。
正直興味をそそられるとともに寂しくもなる。だから私はたくさん話しかけることにした。シェナは話しかけるとちゃんと答えてくれる。今は気後れすることなく話してくれて以前よりも仲良くなれた気がしていて嬉しい。
二人で孤児院に駆け込んだと同時にお昼の鐘が鳴った。ここの孤児院はお昼だけはみんなで食べるのがルールなんだよね。ちょっと不思議な孤児院だなぁ。
不意に一人の男の子とシェナの目が合った。その子はこっちに向かってきた。シェナと同い年くらいだろうか。
シェナがひゅっと息を吸うのがわかった。身構える時のシェナの癖だ。
「ねえ、シェナちゃん。その、一緒にご飯食べない?」
その子は少し頬を赤らめながらそう言った。シェナが困ったように答えた。
「え、えっと、ご飯は一人で食べられる…よ」
「え?」
「…え?」
気まずい沈黙が続く。先に男の子が口を開いた。
「…そうだね。一人で食べられるね。ごめん。それじゃあ」
そう言ってがっくりとしながら離れていった。
「絶対あの子、シェナに惚れてたよ」
「ん?」
ぼそっと言うと小さな声でシェナが聞き返してきた。私は「なんでもないよ!」と言った。
シェナは全くと言っていいほど人と話さない。けれどその代わりに美しいとしか言いようがない整った容姿を持っているおかげでこの孤児院で一番、男女問わず好かれている。人間離れしていて、どちらかというと精霊に近い容姿だ。
そんなことを考えていたら、いつの間にかシェナがもう席に着いていた。あの子ったら、一人ですぐどっか行っちゃうんだから。
「待って待って」
慌てて追いかけて机の一番端に座っているシェナの膝にちょこんと乗る。
振り返ってにこっと笑うと少しだけ目を細めて笑い返してくれた。それが嬉しくて少し光ったら頭を机の下に押し込まれた。ちょっと痛くて怒るふりをした。
でもそれ以上はかまってくれなかった。みんなと一緒にいる時、シェナはあんまりかまってくれない。仕方がないけれど、少し寂しい。
目の前のお皿にはたくさんのフルーツに囲まれた熱々ふわふわな狐色のホットケーキがのっている。メープルシロップがたっぷりかかっていてその上に溶けかけのバターがのっている。
お昼にホットケーキを食べるなんて不思議だなぁ。きっとヴェール先生が作ったんだろうな。 ヴェール先生は甘いものがとっても大好き。一日に一回は甘いものが出る。みんないつもそれがうれしいんだ。
だけど私は知っている。シェナは甘いものが苦手なこと。
だから私も甘いものじゃない時に喜ぶ。私は甘いもしょっぱいも分からないから、いつも契約者の好みに合わせて一緒に喜んできた。人間は誰しも食べ物に関心を持つ。シェナもわかりにくいが、シチューが出る日はやっぱり少し機嫌が良くなる。甘いものが出るともちろん機嫌が悪くなる。
かつての契約者で、精霊に味覚がないことを哀れに思う人がいた。味は人間にとってそれほどに大事なことなんだと思い知らされた出来事だった。
だけど、私は味が分からなくったて良いと思っている。だってそれで幸せなんだもん。大体、精霊は食事を取る必要がないから必然的に味覚はいらなくなるのは当たり前だ。
子供達が思い思いに話しているのを聞きながらぼうっとしていると食堂の正面のところにメアリー先生が出てきた。みんなメアリー先生に気づいて静かになった。
「さあみなさん、自分の目の前にご飯は置いてありますか」
「「はあい」」
「それでは作ってくれたヴェール先生に感謝して、いただきます」
「「いただきまーす!」」
挨拶した次の瞬間みんな一斉に話し始めた。さっきまでの静寂が嘘のようだ。
シェナは誰と話すこともなく、少し嫌そうな顔をしながらホットケーキを次々に口に運んでいた。
そろそろヴェール先生にも気づいてほしいな、シェナの好みのこと。いつもあんなに話しかけているのにシェナのことこれっぽっちも知らないんだから。
大人っていつもそう。子供のことに全然気づけないんだ。子供なんて大人が気づいて守らないとすぐにだめになっちゃうんだから。
あれこれ考えてたらシェナが最後の一切れを食べた。いつの間にか昼食終了時間になっていた。
私は、今とても興味のあるものがある。契約者のシェナだ。
彼女はいつも静かで必要以上に物を話さない。こんな契約者初めてだった。
普通の契約者は、人間と話さないことがあってもその分だけ精霊と話す。なのに、シェナはほとんど人と離さない上に精霊である私とも話さないのだ。それほどに彼女は人見知りで警戒心が強い。
正直興味をそそられるとともに寂しくもなる。だから私はたくさん話しかけることにした。シェナは話しかけるとちゃんと答えてくれる。今は気後れすることなく話してくれて以前よりも仲良くなれた気がしていて嬉しい。
二人で孤児院に駆け込んだと同時にお昼の鐘が鳴った。ここの孤児院はお昼だけはみんなで食べるのがルールなんだよね。ちょっと不思議な孤児院だなぁ。
不意に一人の男の子とシェナの目が合った。その子はこっちに向かってきた。シェナと同い年くらいだろうか。
シェナがひゅっと息を吸うのがわかった。身構える時のシェナの癖だ。
「ねえ、シェナちゃん。その、一緒にご飯食べない?」
その子は少し頬を赤らめながらそう言った。シェナが困ったように答えた。
「え、えっと、ご飯は一人で食べられる…よ」
「え?」
「…え?」
気まずい沈黙が続く。先に男の子が口を開いた。
「…そうだね。一人で食べられるね。ごめん。それじゃあ」
そう言ってがっくりとしながら離れていった。
「絶対あの子、シェナに惚れてたよ」
「ん?」
ぼそっと言うと小さな声でシェナが聞き返してきた。私は「なんでもないよ!」と言った。
シェナは全くと言っていいほど人と話さない。けれどその代わりに美しいとしか言いようがない整った容姿を持っているおかげでこの孤児院で一番、男女問わず好かれている。人間離れしていて、どちらかというと精霊に近い容姿だ。
そんなことを考えていたら、いつの間にかシェナがもう席に着いていた。あの子ったら、一人ですぐどっか行っちゃうんだから。
「待って待って」
慌てて追いかけて机の一番端に座っているシェナの膝にちょこんと乗る。
振り返ってにこっと笑うと少しだけ目を細めて笑い返してくれた。それが嬉しくて少し光ったら頭を机の下に押し込まれた。ちょっと痛くて怒るふりをした。
でもそれ以上はかまってくれなかった。みんなと一緒にいる時、シェナはあんまりかまってくれない。仕方がないけれど、少し寂しい。
目の前のお皿にはたくさんのフルーツに囲まれた熱々ふわふわな狐色のホットケーキがのっている。メープルシロップがたっぷりかかっていてその上に溶けかけのバターがのっている。
お昼にホットケーキを食べるなんて不思議だなぁ。きっとヴェール先生が作ったんだろうな。 ヴェール先生は甘いものがとっても大好き。一日に一回は甘いものが出る。みんないつもそれがうれしいんだ。
だけど私は知っている。シェナは甘いものが苦手なこと。
だから私も甘いものじゃない時に喜ぶ。私は甘いもしょっぱいも分からないから、いつも契約者の好みに合わせて一緒に喜んできた。人間は誰しも食べ物に関心を持つ。シェナもわかりにくいが、シチューが出る日はやっぱり少し機嫌が良くなる。甘いものが出るともちろん機嫌が悪くなる。
かつての契約者で、精霊に味覚がないことを哀れに思う人がいた。味は人間にとってそれほどに大事なことなんだと思い知らされた出来事だった。
だけど、私は味が分からなくったて良いと思っている。だってそれで幸せなんだもん。大体、精霊は食事を取る必要がないから必然的に味覚はいらなくなるのは当たり前だ。
子供達が思い思いに話しているのを聞きながらぼうっとしていると食堂の正面のところにメアリー先生が出てきた。みんなメアリー先生に気づいて静かになった。
「さあみなさん、自分の目の前にご飯は置いてありますか」
「「はあい」」
「それでは作ってくれたヴェール先生に感謝して、いただきます」
「「いただきまーす!」」
挨拶した次の瞬間みんな一斉に話し始めた。さっきまでの静寂が嘘のようだ。
シェナは誰と話すこともなく、少し嫌そうな顔をしながらホットケーキを次々に口に運んでいた。
そろそろヴェール先生にも気づいてほしいな、シェナの好みのこと。いつもあんなに話しかけているのにシェナのことこれっぽっちも知らないんだから。
大人っていつもそう。子供のことに全然気づけないんだ。子供なんて大人が気づいて守らないとすぐにだめになっちゃうんだから。
あれこれ考えてたらシェナが最後の一切れを食べた。いつの間にか昼食終了時間になっていた。