追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く
その瞬間、カラン、と音がした。

スプーンが床に落ちる。

男の顔が歪んだ。

やはり使おうとすると痛みが走るらしく、右腕を強く抑えている。

数秒後、男は左手でスプーンを拾った。

何事もなかったように。

だが空気は重かった。

私は居心地が悪くなって視線を逸らす。

聞いてほしくないことくらい分かる。

だから何も言わない。

それが優しさだと思った。

食事を終え、いつものように薪割りへ向かう。

すると、後ろから足音がついてきた。

「何?」

「手伝う。」

「無理でしょう、貴方には。」

「それくらいできる」

「できない」

「できる」

「できない」

数秒の睨み合い。

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