追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜
毅然と振る舞うには難しい、過去の傷を掘り起こす問いだったからだ。
しかしベリルはエリザベートを見て逡巡し、納得したように独り言ちる。

「あぁ、そういう……」

それから唐突に顎先が掴まれた。

「――俺としては、天地がひっくり返っても届かないものがやっと落ちてきた気分だ」

言葉は甘く響くが、高い位置から落ちてくるのは獰猛な視線。
それがエリザベートを捉えて離さない。

「冗談を言わないで、ちゃんと答えて……」

火が付いたように体が熱くなり、エリザベートはベリルの手を振り払って咄嗟に後退った。

こんな風に熱を灯すのはあの鶏小屋以来である。

「答えただろうが。それにもう決まったことだ」

心中穏やかではないエリザベートをベリルはあの時と同じ、真剣な眼差しで見つめてくる。

「……またごちゃごちゃ考えているようだが、俺は別にお前を恨んじゃいない。うちの親父らもきっと同じだ」

「うそ……」

「嘘じゃない。親父が馬鹿した時のことだろ?銃なんてろくに使ったことねぇもん持ち出すなって母さんは釘刺した、それを聞かなかった親父が悪い。親父はお前が助けてくれたつってたが、迷惑かけたな」

「……嘘よ……本当のことを言ってちょうだい……」
恨まれてないなど、そんなわけがない。

エリザベートは彼らの人生を変えてしまったのだから。

あの当時、ジルはエリザベートの父を拳銃で撃ったが幸い軽傷だった。
元はと言えば父が養鶏所を営むジルに対し不当な扱いをして貶め恨みを買ったせいだ。

重刑と称しジルは片手まで切り落とされ、労役を与えられたのは明らかに過剰で、それは逃亡したことを理由に父が量刑を引き上げさせたからだ。

ベリルの父親を救う方法はきっと他にもあったはずなのに、感情だけで先走ってしまった結果が招いた不幸な結末を、許してもらえるはずなどない。

なのに、ベリルは否定する。

「相手が悪かった。それに親父は引き際が甘かった。そもそも撃ったことは事実だしな」

冷静に、そして淡々とベリルは言う。

「違うわ……私が余計なことしたから……ジルは重刑になったのよ。マーサだってあんなところで労役なんてしなければ感染症にかかって死んだりしなかったはず……」

ずっと後悔していた。
ただ遠くから状況を探ることしか出来ず、あの頃のエリザベートは弱かった。


「あなただって……消えてしまったじゃない」


喉が熱くなりエリザベートは声を震わせた。
合わせる顔がないと理解はしていても、どうしているかだけは知りたかったのにベリルは姿を消した。

エリザベートと完全に関わりを経つ意思が明確に感じられ寂しかった。

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