追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜
「――ねぇ……一昨日の事は、ごめんなさい……手荒なんて言って」

心につっかえていたことを口にすると、ベリルはその意図にすぐ気づいた様子で「気にするな」とだけ答えた。

「……その義手はどうしたの?」
「あぁ、これはルーメンが……お前の妹と一緒に居た魔法使いが作ったものだ」

ベリルは言い直して告げる。
王都で見た、妹のヒストリアと共に居た魔法使いと聞いて直ぐに顔が浮かぶ。

ベリルが彼らとこの辺境で関わっていたことが窺える発言だった。

「動くのね……どうなっているの、それは」
不思議なことに義手はベリルの意思に応じて指先など曲がるらしい。

「神経の信号がどうとか難しいことを言ってたが、とにかく魔法で動くようにしたらしい。今日、会った時につけてもらったが、悪くないな」

ベリルは説明しようとしていたが、面倒になったのか魔法で、と結論付ける。
他人の事は割と丁寧だが、自分の事になるとあまり表に出さないのは昔と変わらない。

家に着くとベリルはさりげなく扉を引きエリザベートを中へと促した。
しかしベリル自身は中に入ることはなく、その場に立ち止まる。

「しばらくの間、あまり外に出るな。鍵もかけておけ。外出したい時は俺が一緒に行く」

「なぜ?」
「お前にご執心な貴族が居る。攫われちゃかなわねぇ」

「……そんな悪趣味な人が居るの?」

聞かされた言葉は考えさせられるものだった。

今やエリザベートは罪人で平民となった身。
これまで侯爵家を継ぐ者として他家の令息から熱い視線は注がれていたが、それはフランドールの名を欲する権力争いによるものだ。

貴族籍のない、まして罪人となり果てた今、エリザベートを囲うのは無駄な浪費だろう。
そのような浪費に耽る人間などいるのだろうかとも思いたいところだが、しかし人間は様々だと知っている。
悪辣な父、ガスト・フランドールのような性根の腐った人間がその代表だ。

とはいえここはラキュウス辺境伯の領地である。
ラキュウス辺境伯は王弟で、その立場の人間を出し抜いてまでエリザベートを所有しようなどと危険を冒す者が本当にいるのだろうか。

「決定打がないってのでまだ調べている最中だが……とにかく、一人で外に出るな。分かったな」

ベリルの瞳は真っすぐエリザベートに注がれていた。
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