結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「そろそろ行こうか」

 デザートを食べ終えて、席を立つ。
 再び彼に手を取られて、予約してある部屋へ向かう。その途中で、冬馬さんが尋ねてきた。

「まだ飲めるなら、部屋で飲み直すか?」

 もう少し彼と話していたいという、私の本音を見透かされているようだ。うれしいお誘いに、「楽しみ」と返した。

 連れていかれたのはスイートルーム。客人を招くことも可能なほど広く、あらかじめ聞いていた通り寝室は三室もある。

 少しのアルコールが気持ちをハイにする。あまりの豪華さに感動して、リビング部分の中央に立って周囲を見回す。

「すごく広い! ここ、一度は泊まってみたかったの」

 程よく酔いが回り、口調が砕けてしまう。

 ここは宿泊体験をつづった他人のSNSを見ては、いいなあと憧れていたホテルだ。でも気軽に利用できるものではなくて、見ているだけで我慢していた。

 室内は明るいグレーを基調にまとめられており、調度品は控えめなデザインで品がいい。ポンッと手で触れてみたソファーは程よい硬さで、絶対に座り心地がいいはずだと断言できる。

 苦笑する冬馬さんを気にせず、浮かれてほかの部分も見て回る。

 広い浴室には、テレビもジェットバスも完備されている。用意されたアメニティーは、グランドコスメの最高級ラインのものだ。ここでしか使えない限定品で、ますます気分が上がった。

 私がひと通り見て回っている間に、冬馬さんはグラスの用意をしてくれていた。

「手伝いもせずに、ごめんなさい」

「今夜は瑞希のお祝いだ。すべて俺に任せてくれ」

 彼に促されてソファーに座る。
 準備ができると、冬馬さんはほんの少し間を空けて私の隣に腰を下ろした。

 レストランでは対面だったが、親密さを感じさせるこの距離はさすがにドキドキする。

 受け取ったグラスに、冬馬さんがワインを注いでくれた。
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