結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「瑞希」

 わずかに体を離した彼が、至近距離から私を見つめる。恥ずかしくてたまらないのに、これほど近づかれたら視線を逸らせられない。

「瑞希ががんばったのは、俺のためだったと自惚れてもいいんだな?」

 言葉のチョイスが引っかかるが、アルコールを口にしている上に、このありえない体勢だ。冷静に考える余裕なんてない。とりあえず、こくこくと首を縦に振った。

「口づけてもいいか?」

「え?」

 もしかして冬馬さんは私以上に酔っているのか。そう疑うったが、視線はいつも通り力強い……というよりも、なにやら熱い。

 移動したときの足取りもしっかりしていたし、むしろ私を支えてくれていたくらいだ。ここまでの会話で、おかしなところは感じられなかったはず。

「拒否しないなら――」

 ただでさえ近かった距離をさらに詰められる。わずかにでも身じろげば、お互いの唇が触れてしまいそうだ。

「いいんだな?」

 私が反応を返せないでいると、最後通告を言い渡される。

 嫌じゃないから困るのだと、言葉にする勇気はない。
 代わりに瞼を閉じると、彼が唇を重ねた。

 優しく触れただけですぐに離れてしまい、思わずもっとと縋りつきたくなる。

 なんとか自制していると、再び口づけられる。
 繰り返し啄むように触れられているうちに、彼の手が私の髪に差し込まれた。

「ん……」

 唇をはまれ、心地よさに吐息が漏れる。

 わずかな隙間から、口内に舌を差し込まれる。驚いて体を揺らすと、なだめるように大きな手が何度も背中をさすってくる。

 思考がぼんやりと霞み、ただ与えられる快楽と温もりを全身で受け止める。すると、不思議と穏やかな気分になっていった。
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