結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 翌朝になってダイニングへ行くと、テーブルにはすでに冬馬さんの姿があった。いつも通りピシッとしていて、連日の深夜帰宅など少しも感じさせない。

「おはよう」

「おはようございます」

 目が合っただけで浮かれそうになる心をなんとか静め、朝食の用意に取り掛かった。

「今日の午後、渡米することになった」

「……ずいぶんと、急な話ですね」

 驚きに、目を見開く。
 ここ数日、彼の秘書がスケジュールを見直しているのは知っていたが、海外出張を入れるためだったらしい。

「以前から考えてはいたが、なかなか都合がつかなかった。だが、先延ばしにできない案件もあるから、少し強引に日程を組み込ませた」

 なにか、懸念していることでもあるのだろうか。

 社長に任せるはずだった案件は、副社長以下に回される。上司の不機嫌な顔が浮かび、ため息が漏れそうになった。
 それを冬馬さんもわかっているのだろう。彼は、珍しくわずかに眉を下げている。

「瑞希たち秘書課には、ずいぶん苦労をかけるな」

「いいえ。しっかりフォローさせていただきます」

 いけない。浮かない顔を見せていたかもしれない。

 必要だと感じたから、彼は無理をしてでも出張を入れたはず。
 帰国した暁には、大きな成果を持ち帰ってくるのかもしれない。そう期待をすることで、寂しいなという個人的な感情を覆い隠した。

 忙しい一日になりそうだとかまえていた通り、冬馬さんのスケジュール変更に伴って出勤直後から調整に追われていた。

 冬馬さんが会社を出たと気づいたのは、ずいぶん経ってからだ。見送りの言葉もかけられなかったと、肩を落とした。

【しばらく留守にするが、なにかあったら連絡を入れておいてくれ】

 帰宅の途中で、冬馬さんからメッセージが届いた。
 上司としてではなく、個人的に連絡をくれたことが無性にうれしい。たったそれだけで足取りが軽くなるのだから、私も現金なものだと思う。




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