結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「贅沢なんて、したいと思っていません。身の丈に合わないものは、必要ありませんから」

 お金持ちとの結婚なんて、微塵も憧れない。

「ほしいものは自力で手に入れるのでお構いなく。それに、私はもともと結婚願望なんてないんです。かまわれたいとか愛されたいとか、そんな望みは持ち合わせていませんから」

 前のめりになりながら、怒りのまま言い返してしまった。

「あっ」

 やってしまったと気づいて口もとを手で覆ったが、もう遅い。
 進藤社長が私に向ける視線が、ますます険しくなる。

「それなら、断ればいいだろ」

 ごもっともだ。返す言葉もなく、口をつぐむ。
 私だってできるものなら受けたくなかったと、理不尽な境遇を嘆きたくなる。

「君がそうしなかったのは、なにか理由があるのか。たとえば、会長に弱みを握られたとか」

 図星を突かれて、つい視線が泳ぐ。
 それを見逃さなかった社長が、冷めた目で私を真っすぐに見すえた。

「事情を聞かせてもらおうか」

「あっ、えっと……」

「嫌だというのなら、この話はなかったことにする。その結果、君がどうなろうと俺の知ったことじゃない」

 ここで見放されたら、私は会社を去ることになる。

 仕事を失うだけなら次を探せばいい。しばらく凌ぐくらいの貯金はあるし、収入が下がっても切り詰めていけばいい。
 でも、借金取りの存在を考えると恐ろしくなる。
 彼らが諦めるはずないだろう。どこまでも追いかけてきて、次の職場も辞めざるをえなくなるかもしれない。もしかして、ドラマや漫画でよくあるような性的な仕事を強要されるかもしれない。

 恐ろしい想像に、冷たい汗が背中を伝う。

 目の前に座る社長は、あきらかに動揺しているだろう私を変わらず睨むように見てくる。
 話したところで、彼がどう出るのか。不安は大きいが、逃げ道はどこにもない。
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