結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「ねえ、聞いた?」

「CMタレントの話でしょ?」

 岡本君に現状を聞いた二日後には、早くもそんな噂話が漏れ聞こえ始めた。

「社長の浮気が原因なんでしょ? 向こうがカンカンに怒っているって」

「でも、なんで今になって言い出したんだろう?」

「さあ? 婚約破棄後の社長の対応がまずかったんじゃないの? だって、すぐに秘書課の人と結婚してたじゃない」

「もしかして、今の奥さんが浮気相手だったりして?」

 根も葉もない噂に、怒りが増す。

「それが本当なら、向こうが怒るのも当然よ」

 好き勝手なことを言わないでほしい。

 悪い話ほど速く広がるもの。
 さらに翌日には、副社長の耳にも入っていた。

「社長にも、本当に困ったものだ。このままでは、責任問題に発展しかねない。なあ、青山君」

 秘書課にふらりと立ち寄ったと思えば、いかにも嫌味な口調で私に話しかけてくる。

「事実関係は確認できていませんので、私からはなにも言えません」

「確認もなにも、婚約破棄の話は知られていることじゃないか。君も関係しているんじゃないのか?」

 まさか、彼の浮気相手が私だったという噂を信じているとでも?
 あまりの言いように、怒りが湧く。でも感情的になってはダメだと、手を握りしめてぐっと抑えた。

「彼の婚約破棄について、私はいっさい関わっていません。憶測だけでものを言うのはやめてください」

「だが、実際に傷ついた女性がいるんだ。それを無視するわけにはいかんだろうな」

「それは……」

 真相はわからないから、はっきり反論しきれないところが辛い。

「よろしいでしょうか」

 私が口をつぐむと、室長が声をあげた。

「副社長の立場から、真偽不明な噂が不用意に広がらないよう注意をしていただけませんか? このままでは、お相手の女性にとっても不名誉なことになりかねませんから」

「ふん。日頃の行いがこういうところに出るんだろうな」

 捨て台詞のように放って去っていく副社長の後ろ姿に、ため息が漏れる。

「青山さん。おそらく、なにか事情があるはずです。まずは社長の帰国を待ちましょう」

「はい」

 味方はゼロじゃない。

 けれど、現状はそんな彼らに迷惑をかけているのが私の存在だ。

 とにかく、プロダクション側にストップをかけるためにも、冬馬さんの帰国を待ってほしいと笹島さんと話をするべきだ。教えられた連絡先にメッセージを送ったが、はたして彼女は会ってくれるだろうか。



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