結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 私たちの婚姻関係がどうなるかはわからないが、冬馬さんが帰国したら悪い噂なんてすぐに払拭してくれる。そう信じて迎えた金曜日。気のせいか、社内はさらに重苦しい空気が漂っていた。

 笹島さんへの連絡を入れたが、彼女からの返信はなにもない。

「青山君。今、例の会議が開かれている時間だな。 副社長として状況を把握しておきたいから、私も顔を出してくる。君も同行してくれるね」

〝例の会議〟とは、タレント起用でもめている件だ。

 副社長はまったくノータッチの案件だが、トップが不在の中、こんなふうに言われては止めることはできそうにない。もっともらしく言っているが、冬馬さんを引きずり下ろすための材料を見つけたいのだろう。

「……わかりました」

 手を止めて、席を立つ。
 心配そうにしている室長に、がんばってくるとの意味を込めてうなずき返した。

「――社長には、一刻も早く謝罪をしていただいて」

「ですが、それが原因だと言われていませんよね? まずは根気よく理由を聞くべきです」

 会議はかなり荒れていた。
 ネクストアーツプロダクションが頑なになる理由はわからないというのに、噂のせいかすっかり冬馬さんが悪いと認定されている。

「このままいったら、発売日の見直しも迫られますよ」

「誰のせいだよ」

 苛立ち紛れに、吐き捨てられる。この発言をきっかけに、何人かの視線が私に向いた。
 好意的なものとはとても思えない。お前が原因だろうと、責められている気分だ。

 副社長は仲介役で来たのかと思えば、この様子をおもしろそうに見ているだけ。

「青山さん、あなたも関係しているんじゃないの?」

「彼女は無関係だろ。いい加減なことを言うなよ」

 宣伝広告の担当女性社員が、睨みつけるように私を見て言う。すぐに庇ってくれたのは、岡本君だ。

「そうよ。憶測で決めつけるのはやめましょう」

 焦りが募って感情が昂り、誰かが悪いと責任を押しつけたくなる心情は理解できる。けれど、それでは話が進まない。
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