結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
(みなみ)さくら」

 唐突に名前をあげた冬馬さんに、私も含めた何人かが反応する。

 南さくらといえば、少し前に冬馬さんと見た洋画で準主演を張っていた日本人タレントだ。
 とはいえ、彼女は日本国内での活動は一切していない。高校を中退して単身でアメリカに乗り込み、下積みを経て成功した人物だ。

「日本でもじわじわきているタレントじゃないですか!」

「え? 本当に?」

 広告宣伝担当者らが、小声で言い合っている。

 南さくらは、出演した映画が日本でも公開されたことをきっかけに、雑誌やテレビで特集を組まれて地名度が高まりつつある。
 ただ、事務所としては謎に包まれていることを売りのひとつにしたいのか、彼女に関して詳細なプロフィールは明かされていない。

 大人びた顔立ちの女性で、映画ではシリアスな役がよく似合っていた。そうかと思えば、アメリカのホームドラマではコミカルな役柄もこなしている。

 どんな印象にも化けられる上に固定されたイメージのない彼女なら、このブランドのコンセプトに寄せることもできる気がする。

「今回の出張で、彼女とコンタクトを取ることに成功した」

 ハッとして、冬馬さんに視線を向ける。
 自信しかないという彼の鋭い視線は、混とんとしていた雰囲気を沈め、もう一度メンバーの心をひとつにまとめ上げていく。

「まだ仮押さえの段階だが、ここで承認を得られたらすぐに依頼をかける準備がある」

 南さくらを知らない人たちが、ネットで調べている。その経歴に驚きの表情を見せ、契約が可能だという冬馬さんの宣言に期待を浮かべる。

「現段階で、ネクストアーツプロダクションの押す月神レイナと、南さくらの二名が候補というわけですが。皆さんの意見を聞かせてください」

 冬馬さんの後を引き継ぎ、議長が話し合いの場を仕切る。
 さっきのような言い合いになることはなく、冷静な意見の出し合いが進む。
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