結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「社長のおっしゃる通り、ネクストアーツプロダクション一択という状況は、今後もなにかと不安が残ります」

「このブランドは南さくらを起用したとして、このほかの商品のプロモーションはどうなるのでしょうか。笹島社長が態度を変えない限り、うちはこの先タレントの確保に苦労することになるのでは?」

 もっともな指摘だ。

「今回、南さくらとの契約の条件のひとつに、うちからあちらの事務所へ出資することが入っている」

 冬馬さんの中では、すでにその辺りも考慮されているらしい。

「今後も、グランドコスメのプロモーションにあちらの所属タレントの起用が可能だ。さらに先を見すえて、海外進出を目指すタレント候補の支援を進藤ホールディングスの事業のひとつとして立ち上げることを検討している。これが軌道に乗れば、タレント起用について国内のパワーバランスに左右されることはなくなる」

 彼はここまでのことを、いつから考えていたのだろうか。

「ちょっと待ってくれ。かなり大きな事業になるかもしれない話を、いくら社長とはいえ勝手に決めてきたと?」

 非難を隠さない口調で、副社長が言う。

「当然、会長の許可は取ってあります。話は数カ月前から動き出している案件です」

 決して、急遽取った対策ではない。もしかして冬馬さんは、あの婚約破棄騒動の頃からこんな事態を見越していたのかもしれない。

 当てが外れたのか、副社長は「この場は社長に任せて、私は戻らせてもらうよ」と、苛立った様子で席を立つ。本来なら私も同行するべきかもしれないが、自身の関係が否定できない中で放ってはおけない。

 扉が閉まると、話し合いが再開される。

「私は、社長の案に賛成です。いいじゃないですか、南さくら。話題性は抜群ですって」

「僕も、いいと思います。それに今回のネクストアーツのやり方は、受け入れられません。なにか事情があるにせよ、長年持ちつ持たれつでやってきたうちに、なんの説明もされないまま一方的に契約解除をするなんて信用できません」

 冬馬さんの案に、賛成の声が高まっていく。
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