結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「それでは、今回のプロモーションは南さくらということで――」

 反対する意見はなく、議長が話をまとめようとしたところで、再びノックの音が響く。
 入ってきたのは、渦中のネクストアーツプロダクションの社長と、娘の笹島さんだ。

「冬馬君が帰国していると聞いたが? ああ、そこにいたか。どうだね、奈央との話を進めようと思うんだが。うちが押した月神レイナの件は、かなり好条件だったはずだ」

「え?」

 つい声をあげると、私の存在に気づいた笹島さんの視線がこちらに向く。それから、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「青山さん、ようやく離婚の決意を固めてくれたのね。うれしいわ」

「離婚? なんの話だ」

 冬馬さんの声が一段と低くなる。

「ち、ちが――」

「あら。冬馬さんと青山さんのことよ。あなたは彼女と別れて、私と再婚するのよ。青山さんも承知しているんだから」

「ま、待ってください。私、承諾した覚えはありませんから」

 慌てて否定したが、冬馬さんにどう思われただろうか。

「だってあなた、連絡をくれたじゃない」

「あれは、会って話をしたかったんです。笹島さんの言う、すぐに別れないなら進藤にどんな影響があるのかというのが今回の件でしたら、放ってはおけないと。夫が帰国するまで待っていただくように、お願いするつもりでした。夫婦に関することを、私の一存では決められませんから」

「ちょ、ちょっと。なに言ってんのよ」

 生涯おひとり様を貫く覚悟を決めていたのだ。無自覚を装って、相手にとって都合の悪い事実を暴露するくらいの強かさは持ち合わせている。

 それに、ここですべてを明かしておかなければ、冬馬さんにとって不利になりかねない。自分が嫌な女になってでも、冬馬さんを守ってみせる。
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