結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「ねえ、冬馬さん。こんな女とさっさと別れてよ! タレントのことで、困っているんでしょ」

 ひどい言い草だけれど、なりふり構わない彼女の言葉くらいで傷つきはしない。

 でも、私には笹島さんのように彼の後ろ盾になるようなものがなにもないのも事実。それどころか、両親の所業が冬馬さんの足を引っぱりかねない。
 私が妻でいていいのか。いつだって自信が持てなくて、徐々に視線が下がってしまう。

「私が愛しているのは、妻の瑞希だけ。いくらメリットを示されようと、彼女と別れるつもりは微塵もない」

 きっぱりと言い切る冬馬さんに驚きを隠せない。

 遠慮気味に彼へ視線を向けると、目が合った冬馬さんが荒れたこの場にふさわしくない、甘い笑みを浮かべた。
 さらに声をあげる笹島さんの言葉なんて、いっさい耳に入らなくなる。

 冬馬さんは、この場を切り抜けるために演技をしているだけかもしれない。それでも私を庇うようにそう言ってくれたことがうれしくて、高鳴る胸もとを手でそっと抑えた。

「笹島社長。この件で、うちは強く不信感を抱いています。プロモーションについて、今回は海外の事務所と契約をすることで落ち着くでしょう。その後については、話し合いが必要そうですね」

「海外? ちょっ、ちょっと待ってくれ。グランドコスメのCM起用の価値は、うちとしても大きいんだ。今回はその、少しお灸をすえるつもりで……」

 グランドコスメのほかのブランドは、起用が若手の登竜門と言われるものもある。起用をきっかけに、知名度をどんどん上げていったタレントが何人もいる。

「我々にこういう判断を下させたのは、あなたですよ」

「冬馬さん、それよりも結婚の話よ!」

 空気を読まない笹島さんの様子に、彼の眉間にしわが寄る。

「プライベートなことで、名誉にも関わる話だ。人の目がある場で明かすつもりはなかったが、ここまで聞く耳を持たないのなら仕方がない」

 冬馬さんが、静かに切り出す。その厳しい雰囲気に、場の緊張が一気に高まった。
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