結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「噂の真偽は……」

 念のために確認しておきたいが、内容を考えると聞きづらい。まして婚約破棄の現場に私が居合わせていたのは、この人も当然気づいていたはず。

「それを君に説明する必要があるか?」

 正面から、これ以上ないほどきつく睨みつけられてひゅっと息をのむ。

「い、いいえ、すみません」

 威圧感たっぷりに返されて、ビクッと肩が跳ねる。
 これは絶対に触れてはならない話題だと、肝に銘じた。

「社内はあんな状況だ。会長が真面目で隙のない相手をあてがうことで、俺の評判を正そうとする気持ちもわからなくもない。それが君だったというのも、普段の勤務態度を見れば納得ができる」

 一応、褒められているのだろうか?

 チラッと彼を見たけれど、明確な感情は読み取れない。この人は、言葉と表情がまったく合致していないからわかりづらい。

「そこでだ。俺と契約結婚をしないか?」

「契約、結婚……?」

「俺は妻という存在を得て、一途な姿を見せることで噂を払拭していく。パーティーなんか必要な場では同伴してもらい、対外的にも妻帯者だと印象づけたい」

「はあ」

 この人が愛妻家アピールなんて、あまりにも現実味がなさすぎる。けれど、それは言わないでおくのが賢明だ。

 それにしても、対外的にと言うくらいだ。結婚適齢期の彼がいつまでも未婚でいては、女性を紹介されたりお小言を言われたりということがあるのかもしれない。

「会長からは、後継ぎもと望まれているんじゃないか」

 ギクリと反応した私に、進藤社長は忌々しそうな顔をした。

「この結婚に、恋愛感情は不要だ。血筋をというのなら、後継ぎは親戚から優秀な人間を選べばいい。会長には、口裏を合わせて授かりものだからとでも濁しておくだけだ」

 それでいいのかと内心で首を傾げつつ、私に求められても困るからうなずいておく。

「俺からの依頼は、契約結婚であることを明かさず夫婦を演じること。結婚を急かすのは会長だけではないからな。うるさくてかなわない」

 やっぱりそうかと、うなずきながら耳を傾ける。

「それに、独身のせいで色目を使う女性が近づいてくるのも鬱陶しい」

「は、はあ」

 気持ちはなんとなくわからなくもないけれど、言い方が辛らつすぎる。
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop