結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「なあ、瑞希」

 不意に声をかけられて、隣を見上げた。
 正面を見ていた冬馬さんも、チラリとこちらを向く。

「このままずっと、俺の隣にいてくれないか?」

 ひゅっと息をのみ、目を見開いた。

「俺の妻でいてほしい」

 真っすぐに見つめられて、視線を逸らせなくなる。

「……どうして?」

 ようやく漏れ出たのは、絞り出すような声。

「俺が瑞希を、愛してしまったから」

「嘘……だって私たちは……」

「嘘なものか」

 喜びが込み上げてくる。まさか、彼も私を求めてくれるとは思わなかった。

 でも、素直にうなずけない。

 彼との生活を手放したくないのは本音だ。
 けれどずっと一緒にいる相手が私では、彼のためにならない。笹島さんに後ろ盾やメリットなんて主張されて以来、自分にはなにもないのだとあらためて気づかされた。

 両親の存在だってある。ほとんど縁が切れているとはいえ、再び迷惑をかけられるかもしれない。

 迷いに視線が揺れる。
 そんな私を見て、冬馬さんが眉尻を下げた。

「瑞希がどうしてひとりを貫くと決めたのか。そろそろ本当のところを聞かせてくれないか?」

「それは……」

「俺では、頼りなくて話せないか?」

「そんなことは絶対にない」

 思わずむきになって反論すると、冬馬さんは一瞬目を見開いてくすりと笑った。

「ごめんなさい」

「いや、いい。瑞希が俺を信頼してくれているのはわかった」

 視線を海に戻す。

 しばらく考えて、わずかに震える唇をゆっくりと開いた。
< 136 / 145 >

この作品をシェア

pagetop