結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「そんな母をずっと見ていて、誰かに頼った生き方はしたくないって思ったんです。自分の足で立って、自分の力で生きていきたい。最初は親に頼らない程度の決意だったかもしれませんが。でも、私がひとり立ちしてもなお迷惑をかけられ続けて。愛し合って結婚してもこんなふうになるのかとまざまざと見せつけられて、わずかに残っていた希望も憧れも消え失せました」

 両親のような人たちばかりじゃないと、もちろん私もわかっている。これまで尊敬できる人や自分と似通った価値観の人と出会ってきたし、その中には交際をした相手もいる。

 けれど、距離が近づくほど怖くなる。両親のような関係になってしまうのではないかと。

「そうか」

 どう思われたのかが怖くて、下を向く。

 こんな話を聞かされて、冬馬さんはうんざりしていないだろうか。
 やっぱり私のような面倒な相手はさっさと切った方がいいと、厳しくシビアな彼なら決断するかもしれない。

「俺のことが嫌いで拒んでいるじゃないんだな」

「そんなわけない」

 思わず顔を上げた。

「むしろ私は……」

 彼が心底安堵した和らかい表情をするから、勢いが続かない。

 言い淀むと、冬馬さんがつないだ手を軽く揺すって先を促してくる。

「私は、冬馬さんのことを……好きになってしまって」

 再びうつむいた瞬間、彼に抱きしめられていた。
 ぶわりと体が熱くなる。

 冬馬さんが、安堵したように息を吐き出した。

「よかった」

 この人でも、不安になったり緊張したりするのだろうか。

「結婚を決めた頃の俺の態度は、褒められたものじゃなかったから」

 婚約破棄の場面も含めて、あの頃の私はこんな男はないなと思っていた。

「瑞希はいつだって凛として、誰の手も借りずに前に進んでいく。それなのに、本当は弱い一面もある。パーティーで酔いつぶれたあの夜、初めて見る心細くて不安そうな瑞希を見て、ひとりにしたくないと思った」

「で、できれば、あの失態は忘れてほしい……」

 仕事だというのに、酔って前後不覚になった挙げ句、冬馬さんに完全に甘えていた。
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