結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 会社同士のつながりがあり、お互いの父親の関係も良好だと聞く。
 彼女は繰り返しここへ訪れており、社長に親しげに声をかける姿を頻繁に見かけてきた。

『婚約者が会いに来たのに……もう、冬馬さんったら!』

 事前に約束はしていないようで、何度か社長の不在時にやってきては頬を膨らませていた。

 私の所属する秘書課に正式な話は回ってきていないが、笹島さん本人がそう言うからには、ふたりは婚約しているのだろうと認識されている。

 それはともかく、彼女が押しかけてくるのは就業時間内が多かった。たとえ社長の婚約者だったとしても、もう少し考えた振る舞いをしてほしいと、常々感じていた。

「あなたの異性関係については、見て見ぬふりをしてきたけど」

 それが本当なら、進藤社長は女性の敵だ。最低すぎる。

 辛くてたまらないというように唇を噛みしめる笹島さんに、見ているこちらも胸が痛む。彼女が何度も抜き打ちのように会社に押しかけていたのは、社長の浮気を止めるためだったのだろうか。

 笹島さんは、たしか私よりひとつ下の二十六歳。NAOの名前で芸能活動していると聞いている。整った顔立ちをしており、それも納得だ。若干つり上がった勝気な印象を与える目もとは、プラスの個性になっているのだろう。

 彼女の身長は、平均的な私とそれほど変わらない。けれど、そのわりに半そでのトップスやミニスカートからのぞく日焼け知らずの白い手足はすらりと長い。そのスタイルのよさは、ちょっとうらやましい。
 明るいオレンジブラウンに染められた髪に、トレンド色を取り入れたばっちりメイク。服もバッグもあきらかに高級なもの。彼女の周りだけライトが当たっているように、キラキラと輝いて見える。
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