結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 もう少し休憩しようと、窓の外に目を向ける。
 街路樹は青々と茂り、まだ四月だというのに気温がぐんぐんと上がった今日は、すでに半そで歩いている人もいる。

 このままどこかで食べてから帰ろうかと思いかけたが、ふと冬馬さんの顔がよぎった。

 同居をスタートしてから、彼と顔を合わせるのは朝食の席くらいだ。それも毎日ではない。私が起き出したころに、玄関の扉が閉まる音が聞こえた日もある。
 顔を合わせれば挨拶くらいするけれど、会話が長く続くことはない。今のところ、同伴の機会もない。

 朝食のタイミングが重なって、一緒にダイニングにいるときの彼は、コーヒーを片手にタブレットでなにかをチェックしている。話しかけては邪魔になりそうで、私はサンドウィッチを無言で頬張る。前夜に用意しておいた具材を挟むだけという、手軽な朝食だ。

 べつに悪いことをしているわけじゃないのに、毎朝自分だけ食べていることを申し訳なく思っていた。かといって彼に勧めても拒否されそうで、なにもできないまま今に至る。

 彼は、休日の今日も仕事をしているのだろうか。平日は日付が変わる頃の帰宅もざらなのに、さすがに働きすぎだと心配になる。
 私ばかり好きなように過ごしていていることが、後ろめたくなる。

「朝食……用意したら迷惑かな」

 婚約破棄をされたときの彼の態度に、ずいぶんひどい男だと思ったのは事実。かといって、冬馬さんを嫌いなわけじゃない。
 一緒に暮している以上は上手くやっていきたいし、なにより私には大きな恩がある。

 冬馬さんはひとりでなんでもこなして、困っていることがないように見える。だから私に返せることを見つけられなくて、日が経つにつれてどんどん引け目に感じるようになってきた。
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