結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 彼がひとつ食べ終えたところで我に返り、私も食事を始める。なんとなく落ち着かなくて、マナー違反だけれどスマホを手にしてしまう。

 昨日更新したブログにコメントがついていることに気づき、口もとが緩む。同じ映画を見た人のようで、相手が興奮気味にコメントを残してくれたのが文面から伝わってきた。

 検索をかけて、いろいろな人の書いた記事を読んでいく。そうして没頭していると、目の前の冬馬さんの存在を忘れていた。

 すっかり集中していたところで、カタリと椅子を引く音が聞こえてハッとする。
 慌てて顔を上げると、彼の手には空になったお皿があり、食べてくれたのだとほっとした。

 私がなにかを言うより先に、冬馬さんが使った食器の片づけを済ませてしまう。戻ってきた彼となんとなく目を合わせるのが気恥ずかしくて、慌てて視線を逸らした。

 どうしてか鼓動が速くなり、ごまかすように食べることに専念する。

「ごちそうさま」

 すれ違いざまにかけられた言葉に、ドキリとした。

「ど、どういたしまして」

 彼の言葉がじわじわと心に沁みていき、胸が温かくなる。たったひと言だったが、迷惑がられていないと感じられて安堵した。

 しばらくすると、玄関の扉がパタリと閉まる音が聞こえてきて時計を見る。ゆっくりしすぎたようだと、慌てて私も会社へ向かった。


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