結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 昼を過ぎた頃、社内を移動していると視線を感じることが度々あった。なんとなくひそひそされている気もする。

「青山」

 早足気味に通り過ぎていたところ、企画部時代に一緒に仕事をしていた岡本(おかもと)君に声をかけられた。彼とは同じ年齢で一緒に組む機会も多く、よく愚痴も言い合った仲だ。

 彼に促されるまま端による。

「久しぶりだね。なにかあっ――」

「これ、本当か?」

 しゃべっていた私を遮って、岡本君が咎めるような口調で尋ねてきた。

「なにが?」

 彼が手にしていたのは、今日発行の社内報だ。
 受け取ってさっと目を通し、とある記事で視線が止まる。

「進藤社長と……」

 岡本君の探るようなつぶやきに、パッと顔を上げた。

「あ、えっと……」

「社内報に乗っているくらいだ。間違いってことはないよな?」

「え、ええ」

 そういえば、私たちの結婚は社内報で発表すると聞いていた。その発行日が今日だったということを、すっかり忘れていた。

 もちろん上役や人事部、秘書課の室長には報告してあるが、発表までは伏せておいてもらっている。

「だけど、進藤社長といえば……」

 笹島さんとの関係や、あの噂を示唆しているのだろう。

「あ、あの話は、関係なくて。その、私が困っていたところを社長が助けてくれて、それで意気投合したというか……」

 出会いのエピソードは、契約結婚を決めた場で冬馬さんと打ち合わせ済みだ。
 冬馬さんのキャラを考えると、意気投合だなんて無理がある気がする。でも、本人がそれでいいというのだからこの設定で押すしかない。

「それにしたって、急すぎないか? なあ、青山。大丈夫なのか?」

「なにも問題はないよ」

「本当に?」

 私に一歩近づいた岡本君が、探るように見てくる。
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