結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「結婚したというアピールだ」

「はあ……」

「発表は今日だろ? いろいろと煩わしかったんじゃないか」

「まあ、たしかに」

 結婚について聞こうと、まさか社長に群がる社員はいない。相手が相手なだけに、すべてが私に向かう。

 直接尋ねてきたのは岡本君だけだったが、あのまま残業していたらどうだったか。『もう定時は過ぎている』という彼の言葉通り、秘書課を出た途端に声をかけられていたかもしれない。

 社長は、つい先日まで婚約者のいた人だ。それは多くが知っているから、いきなり私と結婚したとなればいろいろと勘繰られるのは当然。疑いや、負の感情を抱く人もいるだろう。

 私を救うために、わざわざ来てくれた……のかな?

 せっかく好意的な結論に至ったが、チラッと隣を盗み見たところ、彼が窓の外に向けている視線はいつも通り鋭い。親切とか気遣いなんかからは程遠い様子だ。でも、私の想像は間違いないように思う。

 異性を甘やかしたり人前で自然に触れ合ったりするなんて、この人にとっては慣れないことだったのかもしれない。それなのに、こうして気遣ってくれた。どうせなら、そう好意的に捉えておこうと思う。

「今週末、瑞希はなにか予定があるか?」

 不意に尋ねられて、彼の方を向く。冬馬さんもまた、私を見ていた。

「……えっと、映画を見ようかと」

 たくさんの作品が公開される時期は、毎週のように映画館へ足を運ぶ。まだ見られていない、気になる作品が複数ある。

「そうか」

 簡潔にそう返すと、冬馬さんは再び窓の外を見つめる。
 それで?と、聞き返す勇気はない。いったいなんの確認だったのだろうと首をひねる。
 結局、そのまま彼からなにかを言われることはなかった。

 自宅に私を送り届けた冬馬さんは、この後は取引相手と食事があるからとタクシーを降りないまま引き返していく。
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