結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「どうぞ」

「ありがとう」

 すっとお皿を差し出すと、彼は私をチラッと見てから食事を始めた。

 味の感想くらい聞きたいなと思うけれど、こちらが勝手にしていることだ。押し付けになってはいけない。文句は言われていないから、きっと許容範囲のできのはず

 タンドリーチキンをひと口頬張り、なかなか美味しくできていると表情が緩む。

 半分ほどを食べ終えたところで、不意に視線を感じて顔を上げた。

「瑞希の今日の予定は、映画鑑賞だったな?」

「そうですけど?」

 どうしてそんな確認を?と、首をかしげる。

「俺も同行するから」

「え?」

 それ以上の説明をする気はないようで、彼の視線はさっきまで見ていたタブレットに戻される。

「って……え? 同行?」

「そうだ」

 こちらを見ないまま、淡々とした口調で返された。

「どうして?」

 顔を上げた彼は面倒だという表情を見せたが、すぐに手もとに視線を落とす。

「俺たちが上手くやっているのか、父が探りを入れてきた。早々から不仲ではないかと、耳に入ったらしい」

「不仲?」

「結婚前後の俺たちの間につながりがまったく見えなかったせいで、この一週間のうちに新しい噂が出ているようだ。これはいろいろとカモフラージュするための結婚ではないかと。暇な人間もいるものだな」

 最後は吐き捨てるように言う。

 夫婦らしいもなにも、私たちは交際すらしていない。
 相手が冬馬さんだからこそ、良くも悪くも噂が大きくなってしまうのだろう。

 この人は若くして実力で今の地位に就いたと聞くし、将来はグループトップに立つと言われている。
 部下に対して理不尽な要求はしないし、必要な指導をきちんとしてくれる。けれど愛想がないから、その気遣いが伝わりづらい。

 そんな彼に対するやっかみは、確実にある。とくに副社長は、冬馬さんに対して敵対心のような感情を持っているようだし。

 冬馬さんの事情に加えて、噂が立つ原因はいわゆる玉の輿に乗った私への嫉妬もありそうだ。
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