結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 隣に冬馬さんがいる状況が不思議で、なんとなく落ち着かない。
 けれど、映画が始まってしまえば周りのことなんて意識の外。すぐにスクリーンに映し出される世界に没頭していた。

 すっかり集中していると、数時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
 今回選んだのは、ミステリー作品だ。夫婦そろってはじめてのお出かけにしては、なかなか渋いチョイスだったが、冬馬さんがそれを気にする様子はない。こちらとしても相手に合わせず、自分の希望を通せるのだからかまわない。

 それにしても前評判通りのおもしろさで、最後まで犯人は誰かと目が離せなかった。振り返ってみれば、いろいろな場面に布石がちりばめられており、思い出していくのもおもしろい。それらを理解した上で、もう一度この作品を見たらまた違った楽しみ方ができそうだ。

 余韻に浸りつつ、凝り固まった体を伸ばして……と小さく身じろいだところで、隣の冬馬さんがすっと立ち上がった。

「行くぞ」

「え、あっ、ちょっと待って」

 情緒もなにもない。いかにも時間の無駄だと言わんがばかりに、私を振り返りもせずに歩きだしてしまう。慌ててバッグを掴み、その後に続いた。

「食事をして帰宅する、でいいか?」

「え、ええ」

「行く予定だった店は?」

「今日はそこまで考えていません」

 矢継ぎ早の質問に、咄嗟に返していく。

 端に寄って立ち止まった彼は、スマホを取り出してなにか操作をし始めた。

「こっちだ」

 どこに向かうのかも教えられないまま、とりあえず彼を追う。
 たどり着いたのは、同じビルのさらに上の階に入っているレストランだった。

「ここ、予約制じゃあ……?」

「手配は済んでいる」

 もしかして、さっきなにかをしていたのはこのお店の予約だったのか。
 こんな豪華なレストランで食事?と、贅沢は給料日だけの特権と決めている私は尻込みしそうになる。

 でも冬馬さんに恥をかかせるわけにはいかず、素直に従った。
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