結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 席はどこもパーテーションで仕切られており、スペースも広い。プライベートは守られている。正面に座る愛想笑いのひとつもしない夫の存在を除けば、気兼ねなく食べられそうだと安堵する。

 のどを潤してひと息つく私にかまわず、冬馬さんはテーブルの上にタブレットを取り出した。

「お仕事ですか?」

「ああ」

 私の存在はすでに忘れつつあるのか、彼の意識はすでに目の前の画面に向いている。
 忙しいのならついて来なくてよかったのにと、ついジト目を向ける。けれど、こちらをいっさい見ていない冬馬さんは気づいていないだろう。

 それならいいかと、私もスマホを取り出してブログのアプリを立ち上げた。

 ふたりで外出しているというのに、なんとも味気ない光景だ。
 でも、ここで無理に会話を捻りだすよりは気楽でいいのかもしれない。そのままお互いに干渉し合わず、好きなことをして過ごす。

 うん、快適じゃない!

 欲を言えば、縁あって一緒に暮すようになったのだから、少しくらい相手のことを知りたい。ついそんなことを考えてしまったが、いつかは別れるのだから不要かと振り払った。

 見たばかりの映画について、ネタバレにつながることは書かないように気をつけながら、感想をまとめる。

 推敲をしている間に料理が届き、お互いに一旦手を休めた。

 私がオーダーしたトマトソースをベースとしたパスタは、彩り豊かな野菜がたっぷり使われている。その見た目だけで気分が上がる一品だ。

 スマホのカメラを立ち上げて写真を撮っていると、冬馬さんに怪訝な顔をされたがかまわない。

 撮影を終えて、早速フォークを手にした。
 もっちりとした少し太めの麺はソースがよく絡み、私の好みにぴったり。

「はあ……」

 こんなに美味しいパスタは初めてで感嘆の声が漏れたが、冬馬さんがそれになにかを返すことはない。
 久しく交際相手はおらず、おひとり様で過ごしてきた時間はずいぶん長い。だから、夫のつれない態度も気にならない。むしろ、ペースを崩されなくてちょうどいい。
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