結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 先に食べ終えた冬馬さんは、もう一度タブレットを開いていた。
 待たせるわけにはいかないと急ぎ気味になった私に、彼はこちらを見ないまま「ゆっくり食べろ」とだけ言う。

 わかりにくいけれど、これも彼なりの優しさなのだろう。本当ならすぐにでも帰りたいのかもしれない。でも、今は私に合わせてくれている。

 厳しい一辺倒じゃなくて、冬馬さんはこういう気遣いもできる人だと、一緒に過ごすようになって理解している。言葉数が少ない
人というだけで、意地悪な人でも嫌味な人でもない。

 私が食べ終わった後も、冬馬さんはしばらく仕事を続けていた。キリが悪かったのだろう。それなら私も自由にしていようと、スマホを手に取る。

 ひとまず、映画の感想記事を完成させる。それを投稿し終えると、冬馬さんがまだ動かないことを確認しつつ、同じ映画を見た人の感想を読み漁ったり、コメントを残したりして過ごしていた。

「そろそろ行くか」

「あっ、はい」

 すっかり集中していたところで声をかけられて、慌ててスマホをしまう。
 私が気づかないうちに冬馬さんが支払いを済ませていたようで、そのままお店を後にした。

「冬馬さん、ごちそうさまでした。ランチも映画もおごってもらってしまって……」

 駐車場に向かいながら、声をかける。

「いや、かまわない。これも必要経費だ」

 端的な物言いに、ああそうだったと気づかされる。今日の彼は、不仲説を払拭するために私の外出についてきた。この場を目撃される可能性は低くても、ふたりで出かけた実績が大事。彼の言う通り、ここまでにかかったお金は必要経費に違いない。

 ただ、気が引けてしまうのも事実。
 彼にしてみれば些細な出費なのかもしれないが、どうしたって申し訳なさを感じてしまう。
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