結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 今週末はなにをして過ごそうかと、週のはじめから考えてしまう。

 デパートで開催されている好きなイラストレーターの個展が気になるし、限定のデザインが出たという文具も手に取ってみたい。コスメ売り場で新作のチェックもしばらくできていなかったし、話題のスイーツもまだ食べられていない。

 ひとりで行くなら個展は外せないけれど……と考えたところで、冬馬さんの顔が浮かぶ。

 彼にとってはまったく興味がないものだろう。仕事も忙しそうだし、それならカフェの方が彼も好きに過ごせるだろうか……って、べつに冬馬さんを意識する必要はないとかぶりを振った。次の約束があるわけでもないし、彼からなにも言われていないのだから。

 言い訳がましい私の予想に反して、それからも彼と出かける機会は何度かあった。

 男性も楽しめそうな映画を選ぶようにし、鑑賞後は食事かお茶をする。時間あると、彼はすぐにタブレットを開いて仕事を始める。なんの代わり映えもしない過ごし方だが、とくに大きな不満もなかった。 

 五月も終盤に差しかかって暑さが増し、梅雨の訪れを予感させるじめじめ感も強くなってきた。この調子でいったら相当な猛暑になりそうだと、げんなりする。

 仕事を終えてエントランスを出る。それから、歩調を緩めてさっと周囲に視線を走らせた。

 もう怯える必要なくなったというのに、ガラの悪い取り立て屋に待ち伏せされてからというもの、無意識に警戒してしまう。こうして確かめるのは、もはや癖のようなものだ。

 駅に向かって数歩進んだところで、すれ違った黒い高級車がスピードをぐっと緩める。想像逞しく、もしかして借金取りかと身を固くした。

 立ち止まって恐る恐る振り返ると、グランドコスメのビルの前にすれ違った車が横づけされていた。
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