結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
彼の姿が見えなくなり、我に返って私も歩きだす。
〝浮気者〟
その噂の真相を、本人は答えてくれていない。
ただこれまでの彼を見て、浮気疑惑は本当なのだろうかと疑問に思っていた。あの人に、そんな暇があるのか。
美容関係を扱う仕事柄、取引先が女性である場合が比較的多い。それに男女を問わず、同僚らは美意識が高いように思う。
もちろん職種に関係なく言えることだけれど、私の周りは特にその傾向が強いと感じている。雑談をすると、美容に関する新商品や海外製品の話題が頻繁に上がる。肌悩みからトレンドコスメまで、なにかを相談をするとすぐに答えが返ってくる。
自分磨きに力を入れることが、自社製品を売り込む武器にもなっているはず。グランドコスメの商品を使えば、こんなふうに悩みが解決されて綺麗になれるのだと。
市場に売り出す際には、プロモーションに起用するタレントが大きく鍵を握るだろう。それでも商品を作りだす側の人間が自身のケアを疎かにしては、説得力が欠けてしまう。
さっきの女性は、うちに訪問していたということは美容関係の仕事に就いているのかもしれない。とにかく綺麗な人で、他人に憧れを抱かせるような華やかさがあった。あれほど素敵な人に迫られたら、心が傾く人もいると思う。
冬馬さんは、どうだろうか。
彼女の方がどんなつもりであったにせよ、冬馬さんは仕事で会っていたのだろう。接触を強く拒めないのも、会社同士の関係ゆえだろうと理解できる。
でも、あの人から「後日……」とプライベートの誘いを受けたら? 彼だって男性だ。綺麗な人の甘い誘惑に、なびいてしまうかもしれない。
どんどん膨らんでいく想像を、慌てて打ち消す。これは私の身勝手な妄想にすぎないと、自身に言い聞かせた。
冬馬さんの妻になったとはいえ、あくまで形ばかりのもの。
彼の悪い噂をせっかく払拭しようとしているのに、本人が邪魔をするのは納得がいかないけれど。でも仮初の妻でしかない私に、その交友関係にまで口を出す権利はない。
さっきのふたりの雰囲気は、浮気を疑われる可能性がある。それくらいの文句は言っても許される範囲だと思うが、それをすれば冬馬さんは私を疎ましく感じるだろう。
「見えないところでやってよ」
今日のところは女性の方が一方的に距離をつめていただけだと、見ていた私はわかっている。
それなのに、冬馬さんに対して八つ当たりのような感情が込み上げてくる。
一緒に暮すようになって以来、彼に浮気を疑わせるものはなにもなかった。だって冬馬さんはいつも帰宅が遅いし、休日も頻繁に仕事へ行っている。ふたりで出かけた先でもタブレットを開いていたほどだ。冬馬さんは完全なワーカホリックなのだと思う。女性にうつつを抜かしている暇なんて、ありそうにない。
私の見ていない外出先で、とまで疑いだしたらキリがない。ただ少なくとも、帰宅した彼と出くわしたときに怪しさは感じなかった。
電車に乗り込み、ドアに頭をあずけて瞼を閉じる。何度振り払っても、頭の中はさっき目にしたふたりのことでいっぱいだった。
〝浮気者〟
その噂の真相を、本人は答えてくれていない。
ただこれまでの彼を見て、浮気疑惑は本当なのだろうかと疑問に思っていた。あの人に、そんな暇があるのか。
美容関係を扱う仕事柄、取引先が女性である場合が比較的多い。それに男女を問わず、同僚らは美意識が高いように思う。
もちろん職種に関係なく言えることだけれど、私の周りは特にその傾向が強いと感じている。雑談をすると、美容に関する新商品や海外製品の話題が頻繁に上がる。肌悩みからトレンドコスメまで、なにかを相談をするとすぐに答えが返ってくる。
自分磨きに力を入れることが、自社製品を売り込む武器にもなっているはず。グランドコスメの商品を使えば、こんなふうに悩みが解決されて綺麗になれるのだと。
市場に売り出す際には、プロモーションに起用するタレントが大きく鍵を握るだろう。それでも商品を作りだす側の人間が自身のケアを疎かにしては、説得力が欠けてしまう。
さっきの女性は、うちに訪問していたということは美容関係の仕事に就いているのかもしれない。とにかく綺麗な人で、他人に憧れを抱かせるような華やかさがあった。あれほど素敵な人に迫られたら、心が傾く人もいると思う。
冬馬さんは、どうだろうか。
彼女の方がどんなつもりであったにせよ、冬馬さんは仕事で会っていたのだろう。接触を強く拒めないのも、会社同士の関係ゆえだろうと理解できる。
でも、あの人から「後日……」とプライベートの誘いを受けたら? 彼だって男性だ。綺麗な人の甘い誘惑に、なびいてしまうかもしれない。
どんどん膨らんでいく想像を、慌てて打ち消す。これは私の身勝手な妄想にすぎないと、自身に言い聞かせた。
冬馬さんの妻になったとはいえ、あくまで形ばかりのもの。
彼の悪い噂をせっかく払拭しようとしているのに、本人が邪魔をするのは納得がいかないけれど。でも仮初の妻でしかない私に、その交友関係にまで口を出す権利はない。
さっきのふたりの雰囲気は、浮気を疑われる可能性がある。それくらいの文句は言っても許される範囲だと思うが、それをすれば冬馬さんは私を疎ましく感じるだろう。
「見えないところでやってよ」
今日のところは女性の方が一方的に距離をつめていただけだと、見ていた私はわかっている。
それなのに、冬馬さんに対して八つ当たりのような感情が込み上げてくる。
一緒に暮すようになって以来、彼に浮気を疑わせるものはなにもなかった。だって冬馬さんはいつも帰宅が遅いし、休日も頻繁に仕事へ行っている。ふたりで出かけた先でもタブレットを開いていたほどだ。冬馬さんは完全なワーカホリックなのだと思う。女性にうつつを抜かしている暇なんて、ありそうにない。
私の見ていない外出先で、とまで疑いだしたらキリがない。ただ少なくとも、帰宅した彼と出くわしたときに怪しさは感じなかった。
電車に乗り込み、ドアに頭をあずけて瞼を閉じる。何度振り払っても、頭の中はさっき目にしたふたりのことでいっぱいだった。