結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 出席可能な人はいないか、もう一度スケジュールを見直すが結果は変わらない。

 うんうんと頭を悩ませていたところに電話が入り、近くにいた私が応対する。

「……社長」

 かけてきたのは冬馬さんだ。

『どうかしたのか?』

 不安が声に出ていたかもしれない。受話器越しにもかかわらず、彼はたったひと言でなにかを察してしまう。

「実は……」

 多忙な冬馬さんに聞かせるのも申し訳ないと思いつつ、どうにもならなくて事情を明かす。

 すぐに返事がないのは、彼としても策がないか考えてくれているのだろうか。

『その件、俺が引き受ける』

「ですが……」

 彼は一昨日から、出張で韓国へ行っている。帰国は明日の予定だ。

『こちらのことは心配いらない。後は視察をする予定だったが、ほかの者に任せられる』

 途中からスピーカーに切り替えて、周囲と内容を共有しながら話している。室長は眉間にしわを寄せており、すぐには決断できないでいる。

『こうしている時間が惜しい。フライトチケットは手配済みだから、問題ない』

 ハッとして時計に目を向ける。
 時刻は十四時。今夜の会食は十九時のスタートで、冬馬さんにお願いするにはもうギリギリの時間だ。

 それに、手配済みとは?と、室長と顔を合わせる。
 もしかして、返事がすぐになかったと思っていた間に、彼はすでに動いていたのかもしれない。その上で、出席が可能だと判断して代打を申し出てくれている。

『大丈夫だ、瑞希。後は俺に任せろ』

 不意打ちの名前呼びに、ドキリと鼓動が跳ねる。今のは上司としての言葉ではなく、夫としての言葉だったのだろう。気を紛らせようとしてくれたのかもしれない。

 それほど私の不安が彼に伝わってしまったのだと、自己嫌悪に陥りそうになる。

 隣に立つ室長は、聞こえなかったふりをしてくれている。けれど目じりが少し下がっており、なにか微笑ましいものを見るような表情をしている。それに気づくと、今度は猛烈に恥ずかしくなった。
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