結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「おかえりなさいませ。すみませんが、このまま予定のお店に向かいます」

「ああ、わかっている」

 そう言いながら、冬馬さんがチラッと私を見た。
 海外出張を終えた直後だというのに、疲れを微塵も感じさせない。威圧感のあるその鋭い視線も、今はたのもしく思える。

「ご迷惑をおかけして、すみません」

 タクシーに乗り込むと、すぐさま謝罪した。

「どこにどんなミスがあったのか反省は必要だが、それよりも今はいかに挽回するかだ」

「はい」

 一方的に私を責めているわけではないことは、その口調から伝わってくる。彼も室長も、公平な目で見てくれる。それだけで、沈んでいた気持ちが浮上する。

 勝負はこれからだとすっと前を向くと、ようやくいつもの自分を取り戻せた気がした。

 ひとり満足する私に、隣からくすりと笑い声が聞こえた。
 まさか、あの冬馬さんが笑ったの?と目を向けると、彼と視線が絡む。

「凛としたその姿は、いつもの青山らしい」

「え?」

 どういう意味か、彼に説明する気はないらしい。なにもなかったかのように、冬馬さんは資料に目を落としていた。

 これから会うのは、キャラクターのデザイン会社の常田(ときた)社長だ。彼の会社は、子どもから大人まで年代を問わずに人気の高いキャラクターを次々と生み出している。

 今回はグランドコスメの中でも人気が高い、プチプララインとのコラボを模索している。現場レベルでは水面下で話が進んでいるが、まだ決定には至っていない。この会食で、常田社長にいかにこちらの思いを知ってもらうかが重要だ。

 冬馬さんの素早い決断のおかげで、なんとか相手よりも先に着くことができた。個室にふたりきりで待つ。その間、冬馬さんは私が送った資料を再読していた。
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